激戦の高級ミラーレス、ソニーにキヤノン、ニコンが挑む

誕生10年、新時代へ

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キヤノンのミラーレスカメラ「EOS R」
 キヤノンは5日、デジタルカメラの心臓部である「イメージセンサー」がフルサイズ型の高級ミラーレスカメラ「EOS R」を10月下旬に発売すると発表した。8月23日にはニコンも高級ミラーレス市場への参入を表明。市場はソニー1強から、三つどもえの戦いに突入する。ミラーレスカメラ誕生から10年を経て、ミラーレスは新時代へ移ろうとしている。

進化するカメラ…ハイエンド層狙う


 「カメラの進化は明るさを含め、常に撮影領域の拡大を意味したものだった。今回の『Rシリーズ』はそのカメラの進化の本質に迫るものだ」―。キヤノンの真栄田雅也社長がこう自信を示すように、新型ミラーレスカメラ「EOS R」は、ミラーレスとしては同社初となるフルサイズ型のイメージセンサーを搭載する。

 有効画素数は3030万画素、本体価格は23万7500円で、ハイアマチュアからプロカメラマン向けのいわゆる高価格帯の製品だ。

 「EOS R」の最大のポイントは新型のマウント「RFマウント」を採用した点だ。マウントはカメラ本体とレンズの結合部分。現状、キヤノンはフルサイズの一眼レフカメラで「EFマウント」を採用するが、今回は高級ミラーレス専用のマウントを新たに開発した。これに合わせ、専用レンズも4本投入する。

 マウントの内径は54ミリメートルとし、口径を広げることで光量を多く取り込めるように設計した。さらにレンズ最後端からイメージセンサーまでの距離を意味する「バックフォーカス」を短縮することにより、レンズ設計の自由度も高め、一層の高画質を追求した。

 真栄田社長は、「大口径化とバックフォーカスの短縮化で、従来とは異なる領域のレンズを提供できる」と説明する。

キヤノン、幅広い製品群/光学のニコン、復活へ試金石


 キヤノンは3月、エントリーモデルとなるミラーレスの「EOS キスM」を発売。主力ブランド「EOS キス」シリーズにミラーレスを採用したことで、女性を中心に幅広い顧客層に受け入れられた。後発組にもかかわらず、あっという間にミラーレスで国内トップシェアに上り詰めた。

 エントリーモデルからハイアマチュア、そしてプロカメラ向けとミラーレスカメラ市場における製品種類を確実に拡充するキヤノン。ミラーレスでも首位固めに走る。

 ただ、同社の製品戦略はあくまで一眼レフも含めたフルライン戦略だ。真栄田社長は、「ミラーレスに特化するのではなく、従来の一眼レフカメラも含めて、お客さまの選択肢が広がるようにビジネス展開をする」と強調した。

 一方、キヤノンに先んじて高価格帯のミラーレスへの参入を表明したのがニコンだ。フルサイズのミラーレスカメラ「Z」シリーズを9月下旬から発売する。「Z6」の価格は27万円前後(有効画素数2450万画素)、「Z7」に至っては44万円前後(同4575万画素)を想定する。

 同社も新製品投入にあたり、55ミリメートルと従来より8ミリメートル大きい大口径の専用のマウント「Zマウント」を採用した。

 牛田一雄社長は、「ニコンは新たな価値をミラーレスカメラ市場に提供する。光学を追究したニコンらしいカメラを提供し続けることが我々の使命だ」と新型ミラーレス投入の意義を話す。

 ニコンは2011年にミラーレスを投入していたが、いったん生産を中止しており、ミラーレス市場へは再参入となる。競合他社に比べ、カメラの製品展開に出遅れている分だけ、新型ミラーレス「Z」シリーズは、カメラの名門復活を遂げる試金石となる。

 

誕生10年…転換点迎える


 ミラーレスカメラは、文字通り、本体に取り込んだ光をファインダーに写し出す反射板(ミラー)がないカメラ。その分、本体サイズを小型・軽量化できる。

 デジカメ全体はスマートフォンのカメラの高機能化によって、差別化が見えにくくなったコンパクト型デジカメを中心に販売台数が低下している。実際、カメラ映像機器工業会(CIPA)の統計をみても、17年の出荷台数は2497万台となり、ピークである10年の1億2146万台から約5分の1にまで激減した。

 ただ、全体的に落ち込む中で、相対的にミラーレスカメラの出荷台数は伸びている。CIPAの統計でも、ミラーレスを含むノンフレックスカメラは17年が408万台と前年比約30%上昇した。

伸びる市場、無視できない


 前年の熊本地震で生産工場が稼働停止したことによる反動増もあるが、ミラーレスカメラはスマホと機能面で差別化が図れていることや、スマホから本格的なカメラ撮影への乗り換えニーズをうまく取り込めていることが指摘される。

 現状、各社はフルサイズやAPS―Cサイズなど、イメージセンサーの大きさに応じた製品を展開する。近年はカメラの高価格化が進み、それをけん引しているのがフルサイズで唯一、ミラーレスを投入しているソニーだ。

 同社は13年に世界初となるフルサイズ型ミラーレスカメラ「α7」を発売。以来、着々とラインアップをそろえ、さらにプロのスポーツ撮影向けに「α9」も投入し、早くから高価格路線を走ってきたことで、プロカメラマンの利用が中心となる高級機市場で熱烈な支持を集める。

 ニコンとキヤノンが高級ミラーレス市場に相次いで参入したのは、一眼レフを中心に製品展開してきた両社もミラーレス市場を無視できなくなったことが影響している。この他にも、パナソニックなど競合他社もやはり高級ミラーレス市場への参入がうわさされている。両社の市場参入は、競合他社の戦略を大きく刺激しそうだ。

ニコンのミラーレスカメラ「Z7」

(文=杉浦武士)

日刊工業新聞2018年9月6日

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ミラーレスカメラの誕生から10年の節目を経た今、デジカメ市場で唯一伸びが期待されるミラーレス市場をめぐり、各社の戦略も新たな転換点を迎える。 (日刊工業新聞社・杉浦武士)

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