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揺れる東芝「中堅・中小経営者はどう見たか」我が社の処方箋

経営者として決算数字を作る際に、これだけはやっていはいけないと思うこと
揺れる東芝「中堅・中小経営者はどう見たか」我が社の処方箋

東芝の田中前社長(中央)と室町社長兼会長(左)


中長期の視点で評価、存在意義は社会貢献、未達となる原因探す・・


 ●KMC・佐藤声喜社長(川崎市高津区、金型関連のソフトウエア開発・技術コンサルティング)
 (1)利益が目標に達したかどうかだけでなく、努力の過程や来期に向けた仕込みの状況なども勘案し、中長期的な視点で評価する。
 (2)利益を上げることは企業の存続に必要だが、社員・役員のやる気を引き出すには、利益達成とは別の評価軸(例えば社会貢献など)もしっかり示す必要がある。社内の風通しも自然と良くなる。
 (3)架空の売上高を計上するなど、株主や銀行にうそをつくような粉飾まがいの行為はしてはならない。
 (4)公認会計士の資格を持つ社員が在籍しているほか、会計事務所や弁護士と顧問契約を結んでいる。
 
 ●加藤設計・加藤昌之社長(名古屋市東区、建築設計監理)
 (1)社内情報の公開が不可欠。会社の存在意義は社会貢献であり、利益至上主義ではいけないことを社員に日頃から説いておくことも大事。
 (2)社内情報の公開が大事。またトップが現場と交流するよう常に心がけること。意見は上意下達ではなく双方向であるべきだ。
 (3)脱税や利益の水増しは論外。経費処理を一人の責任者が判断すると、どうしても甘くなる。組織で判断基準を共有するべきだ。
 (4)金融機関に月次決算を見せている。経営環境の変化に即応してもらうには日頃の情報共有が大事。愛知中小企業家同友会の仲間にも決算書を見せ、アドバイスを仰いでいる。
 
 ●山科精器・大日常男(おおくさ・つねお)社長(滋賀県栗東市、工作機械、医療機器製造)
 (1)無理な目標必達、無理な利益向上は、経営にとってマイナスの結果にしかならない。未達となる原因を見つけ、改革・改善することが経営者の仕事だ。
 (2)怒号罵声で社員が動くなら経営とは楽な仕事である。社員同士が絶えず情報交換して、会話するしかない。
 (3)東芝の「利益作りの手法」は大手ならできるが、やはり禁じ手。子会社との取引で利益を作ることは破局の始まり。会計原則の許される範囲内で、「順法精神」がすべてであろう。
 (4)会計士、税理士、社外監査役などの方々に経営の監視役を担ってもらっている。
 
 ●神戸合成・宮岡督修社長(兵庫県小野市、自動車用化学品製造)
 (1)売上高などで高めの経営目標を掲げている。早い段階から現場と目標を共有し、対策も早めに出す。無理な追い込みはしない。
 (2)顧客別、商品別に日々の数字を見て、現場からの日報もチェックし、コミュニケーションに努めている。
 (3)決算を含め、うそをつかない経営が企業を守るのに一番大事だと心がけてきた。
 (4)第三者的に経営を監視する人はいない。ただ、手がける製品を通して、社会的な信用を得ることを常に意識している。
 
 ●ハグルマ封筒・杉浦正樹社長(堺市東区、封筒・紙製品の開発、製造)
 (1)経営者である以上、目標数字を達成したいという強い気持ちは常にある。数字にとらわれすぎないために、数字が会社の第一目標ではないと常に意識するようにしている
 (2)価値観を共有することが大切だ。仕事の範囲でなく、人としてどうあるべきか、大きな価値観を皆で考え話し合う。人事評価も業績より価値観の浸透度に重きを置いている。
 (3)会社が存続する限り、決算は何度も繰り返される。目の前の数字だけにとらわれず、10年後に振り返ったときに正しいと思えることが基本だ。
 (4)経営全体については、監査役、税理士、金融機関に毎月状況を知らせ、意見をもらうことも多い。
 
 ●メイドー・長谷川士郎会長(愛知県豊田市、自動車部品製造)
 (1)経営者が会社の利益より自己保身を図った結果が今回の事件の背景にあると思う。経営者の責務は従業員を育て、利益を生み出して税金を納め、雇用を保証することだ。
 (2)部下を思いやり、お互いの信頼関係を築き上げる。
 (3)当初の計画が無理だと判断した時点で計画を修正するべきだ。計画と実績に大きな差が発生した場合は修正するのが当たり前。
 (4)当社には経営を監視する機関は実質的にはない。ただ、企業経営者は経営結果について「自己の責任である」ということを片時も忘れてはならない。
 
 ●ワールドホールディングス・伊井田栄吉会長兼社長(福岡市博多区、製造派遣・請負、不動産)
 (1)東芝の事案は粉飾に近く一般的にはあり得ない。経営者は社内のチェック体制が機能しているかどうかに注意を払う必要がある。
 (2)私も社員に厳しい要求をすることがあるが、それに対して役員も含め大いに議論する。議論ができる環境づくりが大切だ。
 (3)売り上げに対しての適正利益というのは大体分かっているものだ。利益が突然大幅増になる場合、何か理由がある。その理由を見極めるチェック体制は欠かせない。
 (4)社外取締役3人、監査法人とも契約している。東芝のような不適切な会計問題は当社では考えられない。
 
日刊工業新聞2015年07月27日 深層断面から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
大手と中小では当然、ガバナンスも違うが本質は会社経営における本質は変わらない。山科精器の大日社長の言葉がシンプルだが分かりやすい。「未達となる原因を見つけ、改革・改善することが経営者の仕事だ」。東芝の場合「未達となる原因に蓋をすることが経営者の仕事だった」。

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