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ハイペースの「広告代理店」倒産、クリエイティブ力は必要?

事業継続を希望する声もありながら、エスペイドはなぜ?
 1971年に兵庫県で設立された広告代理店のエスペイドは、8月8日に破産手続き開始決定を受けた。大手企業との取引で事業拡大路線をたどるなか、信用不安が表面化。取引先から事業継続を希望する声もありながら、なぜ破産しなければならなかったのか。

 初代代表がパンの製造販売として起業し、喫茶店、不動産業などへの業態転換を経て2001年に創業者の子息である現代表が事業内容を広告代理店業に変更した。主に広告デザインなどを手がけ、08年には本店機能を関西から東京に移し、旧本店を大阪オフィスに変更した後、15年には沖縄オフィスを開設。大手広告代理店や上場企業を取引先に事業を軌道に乗せ、16年3月期には売上高約4億6400万円をあげていた。

 その一方で、前代表時代からの累損が多く、自社ビルなどの資産売却で債務の圧縮を図っていた。こうした中、従来の取引先であった大手広告代理店の不祥事で経営環境の悪化を受けて受注量が減少し、業績は悪化。代表が私財を投入するなど経営の立て直しを模索するも奏功せず、各税金の滞納がかさみ税務署などから売掛金の差し押さえを受ける事態に発展した。

 ただ、代表を中心としたチームが手がける広告物は代替性に乏しいことから、一部取引先からは「何とか事業を継続してもらいたい」との要請があった。これを受けて、今後の業務は関連会社が受託する予定となっている。

 広告業の18年の全国倒産件数は69件(8月末時点)と、17年の倒産件数77件を上回るペースで発生。こうした環境の中でも、取引先からの信頼は厚かった。だが、実は前代表時代の負の遺産が財務を圧迫し、最終的に外部要因による経営環境の悪化がトリガーとなった。品質だけに目を奪われると、与信管理において重要な事実を見落としかねない。
<企業概要>
(株)エスペイド
住所:東京都港区西新橋3−15−12
代表:但馬吉昭氏
資本金:8888万円
年売上高:約3億9800万円(17年3月期)
負債:約1億6440万円
(文=帝国データバンク情報部)
日刊工業新聞2018年10月16日

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