METI
記者が上野・浅草でキャッシュレス体験。えっ、こんなところも現金のみ!?
切符が買えない!外国人需要を必死で取り込む事業者も
推進機運が高まるキャッシュレス決済。訪日外国人の増加に伴い、とりわけ人気の観光スポットでは現金以外の支払いニーズに対応する動きが広がる。いま、街の風景はどう変わろうとしているのか―。記者は中国から来日中の友人とともに一日キャッシュレス生活を体験してみることにした。
10月初め―。最寄りの駅で友人と落ち合い、まず上野動物園(東京・台東区)に向かう。ところがキャッシュレス生活は、いきなり出鼻をくじかれることになる。
現金はおろか、JR東日本の交通系電子マネー「Suica(スイカ)」も持っていない友人は、切符が買えないのだ。JR上野駅のインフォメーションセンターで乗車券やSuicaの決済手段について聞いてみた。
説明によると、Suicaの購入やチャージは現金のみ。定期券や特急の乗車券などはクレジットカード決済に対応した券売機で購入できるとのこと。QRコードの読み取り部分のある券売機も見かけたが、これは決済用ではなく、予約内容の読み取り用。念のため持参した現金が役立つ形となった。
ちなみに英国・ロンドン観光に欠かせない交通系ICカード「オイスターカード」はクレジットカードやデビットカードで購入、チャージが可能。帰国する時は再び券売機で簡単に保証金とカード残金の払い戻しができる。
気を取り直して、上野動物園に到着。ここでも券売機は現金のみの対応だった。
午後は浅草に移動。雷門周辺を人力車で回るコースを体験。料金は1区間二人で4000円。人力車を運営している「えびす屋浅草店」では、クレジットカード以外に、中国のアリババグループが提供するスマホ決済サービス「アリペイ」も導入していた。
車夫それぞれがQRコードを印刷した紙を持っており、これを利用客のスマホで読み取れば決済は完了。中国の銀行口座を持つ友人は、アリペイを選択したことは言うまでもない。
昼食はロイヤルホールディングスが10月2日にオープンした「大江戸てんや」へ。ここは完全キャッシュレスの店舗で、支払いはクレジットカードや電子マネーのほかQRコードによるスマホ決済にも対応。客の9割が外国人観光客というだけに「アリペイ」はもちろん、同じく中国人が広く利用する「ウィーチャットペイ」も使える。
その後、秋葉原へ移動。おにぎりと飲み物を買おうとローソンに立ち寄ると、そこは客が商品のバーコードをスマホで読み取ることでセルフ決済できるシステムを導入した店舗だった。
同社はこうした店舗を2018年度中に100店舗に拡大する計画で、今春、都内3店舗で行った実証実験では、利用者は商品購入のためレジ待ちの列に並ばなくても済むことから、店内が混雑する朝と昼食購入時に利用が集中したという。
その後もキャッシュレス決済が利用できる店を探しながら友人の東京滞在を楽しみ、帰宅は日本交通のタクシーで。スマホ決済に慣れてきた記者はオリガミペイを利用した。
今回、見えてきたのは、外国人観光客を何とかして取り込みたいという事業者側の切実な思いと、人手不足に直面するサービス業が生産性向上の切り札としてキャッシュレス決済を推進する姿。
そこにQRコードという手軽に導入できる決済手段が登場したことで、飲食や宿泊サービスなど消費の現場は急速に変わりつつある。一方で公共施設や交通機関の対応はまだまだこれからといえる状況だ。
さらに一口でキャッシュレレス決済と言っても、サービス形態は多様化しており、どの決済手段に対応するかは、利用者ニーズや企業戦略によるところが大きく、日本におけるキャッシュレス決済サービスは勃興期にあるといえるだろう。
キャッシュレス第一世代をクレジットカードとすると、交通系や流通系を中心とする電子マネーは第二世代。そしていま注目を集めるQRコードやバーコードを用いたスマホ決済サービスは第三世代といえる。
日本でキャッシュレス決済の普及を阻む壁として指摘されるのが加盟店側のコスト負担だ。クレジットカードや電子マネーによる決済は専用の決済端末やネットワーク回線が必要で、一般的なクレジットカード決済のインフラを導入する場合、端末費用として10万円程度、決済手数料として平均3%強のコストがかかり、カード会社からの入金に30日程度を要する。
現金決済ならばこれらのコストは必要なく、とりわけ、仕入れから販売に伴う現金回収までにかかる日数を短縮化して資金効率を高めたい中小事業者にとっては二の足を踏まざるを得なかったのが実情だ。
ところがここへきてにわかに注目を集めているQRコードやバーコードを用いたスマホ決済は、これらの課題を乗り越え、日本でのキャッシュレス化の原動力となる可能性が出てきた。キャッシュレス第三世代ともいうべきこれら決済サービスには、金融業以外の異業種からの参入も相次ぎ、新たな決済手段として積極的に取り入れる動きが急速に広がる。
10月初め―。最寄りの駅で友人と落ち合い、まず上野動物園(東京・台東区)に向かう。ところがキャッシュレス生活は、いきなり出鼻をくじかれることになる。
現金はおろか、JR東日本の交通系電子マネー「Suica(スイカ)」も持っていない友人は、切符が買えないのだ。JR上野駅のインフォメーションセンターで乗車券やSuicaの決済手段について聞いてみた。
説明によると、Suicaの購入やチャージは現金のみ。定期券や特急の乗車券などはクレジットカード決済に対応した券売機で購入できるとのこと。QRコードの読み取り部分のある券売機も見かけたが、これは決済用ではなく、予約内容の読み取り用。念のため持参した現金が役立つ形となった。
ちなみに英国・ロンドン観光に欠かせない交通系ICカード「オイスターカード」はクレジットカードやデビットカードで購入、チャージが可能。帰国する時は再び券売機で簡単に保証金とカード残金の払い戻しができる。
気を取り直して、上野動物園に到着。ここでも券売機は現金のみの対応だった。
午後は浅草に移動。雷門周辺を人力車で回るコースを体験。料金は1区間二人で4000円。人力車を運営している「えびす屋浅草店」では、クレジットカード以外に、中国のアリババグループが提供するスマホ決済サービス「アリペイ」も導入していた。
車夫それぞれがQRコードを印刷した紙を持っており、これを利用客のスマホで読み取れば決済は完了。中国の銀行口座を持つ友人は、アリペイを選択したことは言うまでもない。
昼食はロイヤルホールディングスが10月2日にオープンした「大江戸てんや」へ。ここは完全キャッシュレスの店舗で、支払いはクレジットカードや電子マネーのほかQRコードによるスマホ決済にも対応。客の9割が外国人観光客というだけに「アリペイ」はもちろん、同じく中国人が広く利用する「ウィーチャットペイ」も使える。
その後、秋葉原へ移動。おにぎりと飲み物を買おうとローソンに立ち寄ると、そこは客が商品のバーコードをスマホで読み取ることでセルフ決済できるシステムを導入した店舗だった。
同社はこうした店舗を2018年度中に100店舗に拡大する計画で、今春、都内3店舗で行った実証実験では、利用者は商品購入のためレジ待ちの列に並ばなくても済むことから、店内が混雑する朝と昼食購入時に利用が集中したという。
その後もキャッシュレス決済が利用できる店を探しながら友人の東京滞在を楽しみ、帰宅は日本交通のタクシーで。スマホ決済に慣れてきた記者はオリガミペイを利用した。
見えてきた実情
今回、見えてきたのは、外国人観光客を何とかして取り込みたいという事業者側の切実な思いと、人手不足に直面するサービス業が生産性向上の切り札としてキャッシュレス決済を推進する姿。
そこにQRコードという手軽に導入できる決済手段が登場したことで、飲食や宿泊サービスなど消費の現場は急速に変わりつつある。一方で公共施設や交通機関の対応はまだまだこれからといえる状況だ。
さらに一口でキャッシュレレス決済と言っても、サービス形態は多様化しており、どの決済手段に対応するかは、利用者ニーズや企業戦略によるところが大きく、日本におけるキャッシュレス決済サービスは勃興期にあるといえるだろう。
キャッシュレス第一世代をクレジットカードとすると、交通系や流通系を中心とする電子マネーは第二世代。そしていま注目を集めるQRコードやバーコードを用いたスマホ決済サービスは第三世代といえる。
日本でキャッシュレス決済の普及を阻む壁として指摘されるのが加盟店側のコスト負担だ。クレジットカードや電子マネーによる決済は専用の決済端末やネットワーク回線が必要で、一般的なクレジットカード決済のインフラを導入する場合、端末費用として10万円程度、決済手数料として平均3%強のコストがかかり、カード会社からの入金に30日程度を要する。
現金決済ならばこれらのコストは必要なく、とりわけ、仕入れから販売に伴う現金回収までにかかる日数を短縮化して資金効率を高めたい中小事業者にとっては二の足を踏まざるを得なかったのが実情だ。
ところがここへきてにわかに注目を集めているQRコードやバーコードを用いたスマホ決済は、これらの課題を乗り越え、日本でのキャッシュレス化の原動力となる可能性が出てきた。キャッシュレス第三世代ともいうべきこれら決済サービスには、金融業以外の異業種からの参入も相次ぎ、新たな決済手段として積極的に取り入れる動きが急速に広がる。