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2030年に400兆円、IoT市場のチャンスをつかむには?

【連載 CEATEC JAPAN 2018#1】シーテック ジャパン実施協議会・柵山正樹会長
2030年に400兆円、IoT市場のチャンスをつかむには?

柵山正樹会長

 多様な企業がIoT(モノのインターネット)ビジネス拡大を目指している。明日16日に開幕する「CEATEC JAPAN(シーテック ジャパン)2018」では、さまざまな企業が未来の社会に向けたIoTビジネスを紹介する。シーテック ジャパン実施協議会の柵山正樹会長(電子情報技術産業協会〈JEITA〉会長、三菱電機会長)に今後の展望を聞いた。

 -現在のIoTビジネスの盛り上がりをどう見ていますか。
 「JEITAでは、世界のIoT市場が2030年には16年に比べ約2倍の約400兆円へ拡大すると見通している。現在は道具であるIoT機器ブームの側面が目立つが、その道具を使ってデータを利活用し、サービスや価値をしっかり創り上げ、ブームを本当の経済成長につなげていきたい。そのためには、利用者が(IoT市場成長の)何倍もの価値を感じられるサービスをつくらなければならない」

 -IoTによるどんなビジネス変化に注目していますか。
 「IoTに加え、人工知能(AI)の進展とビッグデータの利活用によって、大きな変化が起きている。例えば、製品とサービスの一体化によってできるユーザーの利便性に立脚したビジネス。本年がシーテック初出展となるコマツはIoT活用の好例だ。コマツの『コムトラックス』は、建設機械にセンサーを搭載し、データを保守管理などに役立てることで、稼働率を高めている」

 -シーテックがIoTの総合展に衣替えし、今回で3回目の開催となります。
 「約10年前は3次元(3D)テレビなどの映像機器の展示が多かったが、日本の産業が変わるのに合わせてシーテックも変わってきた。2017年には、出展者の半分が新規出展者、来場者の32%が新規来場者となった。毎年会場を歩くと、『こんなに変わってきたか』と実感する。16年のトヨタ自動車の出展が特に印象的だった。多くの企業と共に超スマート社会である『ソサエティ5.0』の実現を目指したい」

 -新しくシーテックに入ってきた業界と電機・通信業界の『共創』をどう促しますか。
 「お互いを知り、気づきの得られる場としてシーテックを活用してほしい。シーテックは共創のきっかけとなる場だ。今年は金融や農業、建設、観光、ヘルスケア、物流・流通などの企業が出展する。出展者同士の交流からも新しいアイデアが生まれることを期待したい。また、ベンチャー企業や海外との交流も増やしていく」

 -IoTビジネスでは、情報を集めて分析するプラットフォームで優位に立てるかという競争が激しいのではないでしょうか。
 「競争関係にあっても、ユーザーの使い勝手を高めてサービス導入を促すなどの連携は有効だ。例えば、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブを中心に、DMG森精機と日立製作所、ファナック、三菱電機では、異なる製造プラットフォームをオープンで共通的な枠組みによってつなごうとしている」

 -基盤となる技術の進化も欠かせません。
 「通信の高速化やつながりやすさに向けて、やるべきことはまだまだある。ソサエティ5.0に向けた革新的な道具として、第5世代移動通信システム『5G』が市場に入ってくる。高速・大容量通信などの5Gの特長を活かしたビジネスモデルが登場するだろう」

 -若く才能のある人たちの価値づくりへの参加が期待されます。
 「超スマート社会の実現は夢のある仕事だ。若い人の理工系離れと言われて久しいが、ワクワクするような大きな夢が必要なのではないか。シーテックで未来の可能性を提示し、若いエンジニアが夢を持てるような場としていきたい」

インタビュー連載「CEATEC JAPAN 2018」


【01】2030年に400兆円、IoT市場のチャンスをつかむには?(10月15日公開)
【02】ローソン社長が語る、デジタル×コンビニの未来(10月16日公開)
【03】トヨタグループの考えるコネクテッド技術と将来のモビリティー(10月17日公開)
【04】IoT時代にものづくり企業が考えるべきコト(10月18日公開)
日刊工業新聞 2018年10月15日
梶原洵子
梶原洵子 Kajiwara Junko 編集局第二産業部 記者
シーテックは、業種の広がりに加え、大手企業もスタートアップも多く出展し、多様な製品を見られる展示会になってきました。IoTやソサエティー5.0という言葉をよく聞くようになりましたが、将来、生活がどう変わるか想像しにくい人もいると思います。シーテックが未来の一端を体験し、想像できる場として発展していくことが期待されます。

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