大学院教育改革を先導する「卓越大学院」、4倍弱の競争率で選ばれた大学は?

文部科学省13大学15件を採択

 文部科学省は大学院教育改革を先導する2018年度新事業「卓越大学院プログラム」で13大学15件の採択を決めた。東北大学と名古屋大学は各校2件ずつ採択された。国立大学の研究型大学以外では長岡技術科学大学と長崎大学が、私立大学では早稲田大学が選ばれた。異分野融合や企業資金獲得をキーワードに、科学技術と高等教育の取り組みを連動させる高度人材養成プログラムが動きだした。

 一般的な世間のイメージとして博士号取得者は閉鎖的で視野が狭いと考えられている。卓越大学院プログラムに採択された大学は、博士課程学生に5年一貫で世界最高水準の教育を全学的に実施する。専門性だけでなく独創力や社会全体の俯瞰(ふかん)力を育てるため、学内の研究科の横断、国内外の研究機関や産業界との連携に取り組む。

 当初は1件あたり5億5000万円のプログラムを10件採択するとしていたが、4倍弱の競争率を経て15件の採択となった。文科省の19年度予算概算要求では19年度新規採択15件分を計上している。

 採択案件の領域は生命・医療系、エレクトロニクスや材料の工学系でほぼ二分されている。さらに情報など社会のイノベーション創出に必要な分野融合を盛り込んでいる点が共通する。

 文科省が進める科学技術や産学連携の既存の拠点形成事業と連動したケースも目を引く。名大の化学・生命科学融合は基礎研究の国際競争力強化に向けた「世界トップレベル研究拠点プログラム」(WPI)、東北大の人工知能(AI)・エレクトロニクスのプログラムは組織対組織の大学産学連携コンソーシアム事業「産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム」(OPERA)に連動する。拠点に集まる国内外の大学や研究機関、企業など多機関の関係者が博士教育に関わる仕組みだ。

 また国の支援終了後を見据え、資金面を支える企業や大学独自の資金の投入計画といった継続性も審査のポイントとなった。学内外から資金を集めるため「プログラムの進行状況などの説明責任が格段に高くなる」(文科省・高等教育局)。大学院教育の閉鎖的なイメージが大きく変わろうとしている。

 

(文=山本佳世子)

日刊工業新聞2018年10月11日

山本 佳世子

山本 佳世子
10月11日
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教育案件ながら、社会と大学の関心の差がこれほどある国の事業も珍しい。博士人材が広く社会で活躍することを目指しての事業だけに、気になるところだ。しかし連携先の製造業などの多数の企業は、資金提供をしながら博士学生に接するとなれば、関わりはこれまでと比べ段違いに深くなる。そして博士人材の批判を離れた位置からするのではなく、当事者として、つまり産業界にも教育改革の責任があるのだという気持ちを持って、取り組んでくれることを期待したい。

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