月刊誌「ソトコト」編集長に聞く、地方での起業に成功する方法

土地の文脈を大切にし、地域と関わりを持つ

 地方で起業が増えている。人口1500人の岡山県西粟倉村は30社のベンチャーが生まれて移住者が増え、人口が増加に転じた。地域の若手起業家を数多く紹介している月刊誌『ソトコト』の指出一正編集長(木楽舎取締役)によれば、必ずしも地域貢献が起業のきっかけではないという。新しい起業の波を地元企業と行政はどう地域再生に生かしたら良いのか、指出編集長に聞いた。

 ―地域課題解決や地域貢献が起業の動機ではないのは意外です。

 「好きなことをやりたい、周囲に喜んでもらいたいと思った小さな起業が、社会を変えている。どれも土地の文脈を大切にし、地域と関わりを持つ。集会所がなくて困っているからカフェ、回覧板がないから地域メディアと、形を変えて必要なものが復活している」

 ―地域側に変化がありますか。

 「地方は閉鎖的でなくなった。09年起業の西粟倉の木材加工ベンチャーのような地域外から来た開拓者のノウハウがシェアされ、全国に広がったからだ。大手チェーンが撤退したからといって寂れた街ではない。起業家には空きスペースに出店できるチャンスだ」

 ―大手企業の下請けをしている中小企業が地域ビジネスを始めることもできますか。

 「若者が発想した商品の製造を請け負う地域企業がある。広島県福山市では錨(いかり)を鍛造する鉄工所が地域ブランドの家具を作っている。揺るぎない技術力と若者のアイデアが接点を持つと地域に役立つ。底力のある産業が新しい視点を生かせるかどうかだ」

 ―地域で事業を興して成功するには。

 「準備段階から地域に入って活動しておくこと。店内の内装を小学生やおばあちゃんに手伝ってもらうなど、コミュニティーの中で会社を生みだす」

 ―ベンチャーは創業者が一人で頑張るイメージがありますが。

 「起業家はよろいを外して困っているところを見せ、周囲に助けてもらう。一人で完成させるよりも、地域の誰かと関わりを持った方がいい。また失敗を恥と思わない。地域も失敗を許す地域であること」

【略歴】さしで・かずまさ 92年(平4)上智大法卒、11年から『ソトコト』編集長。島根県「しまコトアカデミー」講師など各地の地域プロジェクトに携わる。48歳、群馬県出身。


日刊工業新聞 2018年9月24日

松木 喬

松木 喬
09月25日
この記事のファシリテーター

『ローカルベンチャー』(木楽舎)読みました。西粟倉村で起業した牧さんの著書です。★イメージしていたことが実現されるまで10年くらいかかる。とにかく地域では短期決戦は難しい。★「地域貢献シンドローム」(地域は困っている、自分たちが何とかしなければ、という勝手な思い込み)。★地域もベンチャーへ過度に期待しない、などなど、いろいろなことに気づかされました。

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