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被ばく線量、歯で測定。福島第一原発の被害究明に期待

東北大が新手法
被ばく線量、歯で測定。福島第一原発の被害究明に期待

計測原理のイメージ(東北大提供)

 東北大学大学院理学研究科の岡寿崇助教と東北大病院の高橋温助教らは、抜歯した歯を使ってわずかな被ばく線量を測る技術を開発した。歯のエナメル質を抽出して電子スピン共鳴(ESR)法で計測する。検出限界を従来法の5分の1に下げられた。福島第一原子力発電所事故当初の被ばく線量を推定する手がかりになる。福島県の歯科医師会と協力して調査していく。

 従来法では検出限界は200ミリグレイだったが、新手法で40ミリグレイに改善した。グレイは放射線吸収線量の単位。40ミリグレイは1時間当たり1マイクロシーベルト(マイクロは100万分の1)の線量下に4年半生活した被ばく線量に相当する。事故で多くの住民が避難したため、40ミリグレイの大部分は事故当初の被ばく線量を表すと考えられる。

 乳歯など歯科治療で抜いた歯を利用する。歯に放射線が当たると炭酸ラジカルが生じる。この量をESR法で測る。炭酸ラジカルは数十万年単位の寿命をもつため累積被ばく線量を推定できる。計測精度を高めるためにエナメル質を効率良く抽出する手法を新たに開発した。歯の中心に近い象牙質が水分や有機物を含み、ESR法の精度を下げていた。
                  
日刊工業新聞2018年9月14日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
行動から被ばく線量を推定する場合、記憶が曖昧だったりと不確定な要素がある。福島県の歯科医師会から6000本近い歯の提供を受けており、被ばく線量を調査していくという。動物の歯でも同様の計測が可能。猿やアライグマなどについて調査している。放射線環境下での生態系変化などの研究に新手法を提案していく。詳細は東北大学(仙台市青葉区)で開催中の日本分析化学会で紹介するそうです。

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