野口英世輩出の日本医科大、学長が語る伝統とダイバーシティー

日本医科大学学長・弦間昭彦氏

 日本医科大学は、創立140年を超える日本最古の私立医科大学だ。前身である済生学舎からは、黄熱病の研究に従事した野口英世や東京女子医科大学創立者の吉岡弥生を輩出するなど、日本の医学研究や教育に大きく貢献してきた。こうした歴史を持つ日本医科大の現在の人材育成や研究の強み、新しい取り組みについて弦間昭彦学長に聞いた。

 ―伝統はどう受け継がれ、どのような変革を迎えていますか。
 「公に尽くす事を意味する“克己殉公”の精神が今も校風に息づいている。海外で感染症の研究に尽力した野口英世や肥沼信次ら卒業生が、それを体現している。付属病院の強みである救急医療にその精神が受け継がれている」

 「伝統が息づく一方で、変化も多く取り入れている。学費を大幅に値下げし、面接と小論文の評価を重視する後期入試を導入した。こうした試験方式で医師としての資質を見極め、再受験生や社会人など多様な学生の入学につながっている」

 ―学生教育に変化はありますか。
 「学生のやる気を生かすためITを取り入れた学習支援システムを採用している。システムから資料をダウンロード可能にし、予復習を促す。さらに、成績優秀者は授業の出席が免除される制度があり、学生はeラーニングを利用して学習しつつ、その期間を研究や留学にあてることができる」

 「少人数のグループで討論を交えながら行うスモールグループラーニング(SGL)にも、ITを活用している。電子黒板に学習データが記録されるため、他のグループの学習内容を見ることができる。また、データ蓄積により学生が間違えやすい課題が可視化する。こうしたデータから、人工知能(AI)を活用した教材作りを進めている」

 ―研究の強みは。
 「がん患者の生体試料を集めたバイオバンクの構築に力を入れている。どのような治療を受けて耐性が生じた患者の試料なのかといった、従来検体とのひも付けが困難だった詳細な臨床データを登録し、がんの研究に利用している」

 「女性医師の研究支援にも積極的だ。育児中の女性医師の取り組む研究テーマに対し、興味がある学生を募集する。そして学校から学生に費用を出して研究の補助をしてもらう制度がある。これにより、時間に制約がある育児中の女性医師も研究に取り組むことができる」
                 

【略歴】げんま・あきひこ 83年(昭58)日本医科大医学部卒、89年同大大学院修了。98年同大講師、04年同大助教授、同年付属病院輸液療法室室長。07年同大准教授、08年同大主任教授。15年同大学長。山梨県出身。61歳。



日刊工業新聞2018年9月13日

日刊工業新聞 記者

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09月14日
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女子学生や浪人生への学校の対応や医学界の体質が問題視される中、日本医科大は医師の資質を重視し、生かす教育を実施する。男女比もほぼ同数で、社会人経験のある学生も入学する。弦間学長は「多様な学生は宝だ」と強調する。IT活用で自主性を伸ばす教育を進めるなど、さらなる多様性の発揮に期待できそうだ。(安川結野)

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