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原子力事業の再編統合は本当に実現するの?

原子力事業の再編統合は本当に実現するの?

東電の小早川社長が廃炉の方針を表明した福島第二原子力発電所

 東京電力ホールディングスと中部電力、日立製作所、東芝の4社が、原子力事業での提携に向けて協議していることが22日、分かった。電力会社と原発メーカーが協力して原発の安全性や経済性の向上に取り組み、原発事業の競争力を高める。原発の新増設工事や廃炉作業の共同化を検討するほか、保守管理の会社を4社共同で設立することなどを視野に入れる。将来的には、原子力事業の再編統合につながる可能性もある。

 協議は以前から行われてきたが、東芝の経営危機問題が落ち着いて話し合える状況になったこともあり、協議は今後本格化するとみられる。

 東電と中部電は、東日本大震災で事故が起きた福島第一原子力発電所と同型の沸騰水型軽水炉(BWR)と呼ばれる原発を運営する。BWRを福島第一を除き東電が福島第二(福島県富岡町、楢葉町)と柏崎刈羽(新潟県柏崎市、刈羽村)で11基、中部電が廃炉作業中2基を除き浜岡(静岡県御前崎市)に3基保有する。

 東電HDは福島第二の全4基について6月、小早川智明社長が廃炉にする方針を表明している一方で、柏崎刈羽6、7号機を国の原子力規制委員会が定めた新規制基準に適合させ、再稼働に向け地元自治体の同意を待っている状態。

 また、中部電は同社唯一の原発である浜岡原発の再稼働時期は見通せていないが、再稼働に向けて同型のノウハウを持つメーカーである日立や東芝との連携をさらに密にして、運転や保守のさらなるコスト低減を図る狙いだ。浜岡原発では原子炉が東芝、タービン発電機が日立の製品を採用している。

 福島第一原発の事故後、原発の規制が強化され、原発の再稼働や運営など安全面に関わるコストが膨らんでおり、1社単独で事業を行うことは厳しくなっている。そのため4社で連携する必要があると判断したようだ。

 東電と中部電は国内の火力発電事業を2019年春に統合する計画。原発事業でも協力関係を確立することで、将来的には事業統合につながる可能性もある。
日刊工業新聞2018年8月23日
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
原子力事業はもともとリスクが大きく、全面的に民間にゆだねるには難があった。だが、国の独占事業とするとコスト増大を招くおそれがあり、電力会社に運営させた。しかし、福島第一原発の事故発生により規制が強化され、原発の再稼働や運営など安全面に関わるコストが増大し、1社単独で原発事業を行うことは厳しくなった。加えて、電力業界は小売り自由化で新規参入企業との競争が激化し、原発関連投資に多くを割く余裕はない。今後、東京電力等の沸騰水型軽水炉(BWR)陣営と、関西電力等の加圧水型軽水炉(PWR)陣営が、それぞれ連携・統合して原発を運営する動きが加速しよう。そして、それは原発をトリガーとして、電力業界の事業の再編へと発展しよう。

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