METI
生産額米国の10分の1、差を縮める航空機サプライヤーの主役たち
欧州からも秋波
世界的に旺盛な旅客機需要を背景に、成長が見込まれる航空機市場には、他産業の企業からも熱い視線が注がれている。
海外メーカーが大きく市場を占めている航空機シート。その牙城に切り込んだのが、トヨタ紡織だ。同社は、コンパクトカーから高級車まで年間約700万台分のシートをトヨタ自動車をはじめとしたカーメーカーに提供。最近では、北陸新幹線の新型車両など鉄道車両用シートの開発・製造も手がけるが、航空機分野への参入は2015年が初めて。全日本空輸(ANA)と共同で、国内線普通席用のシートを開発し、これまでにボーイング767―300型機6機に導入されている。
ANA側にとって採用の決め手となったのは、快適性や軽量化による燃費向上に加え、国内メーカーならではの意思疎通の早さや整備部品も含めたコスト削減による長期的なメリット。2015年4月の記者発表時、トヨタ紡織の豊田周平社長(現会長)は「今回やったことをベースに次のステップを検討したい」と意欲を見せていたが、まさに現在は新たな基準に対応するシートのベース骨格の開発に着手している。沼毅社長は「航空機用シートビジネスの基盤を確立したい」と意欲を示す。
欧州では新たなビジネスチャンスが生まれようとしている。
2017年9月―。都内で開かれた日本企業向けの欧エアバス社による説明会には、全国から高い技術力を誇る100社あまりが参加した。この説明会は経済産業省とフランス航空総局(DGAC)が立ち上げた「日仏民間航空機産業協力」に基づくもので、両国政府の下、通信やライトなどの客室技術や3Dプリンター技術など新分野でエアバスと日本企業の連携を促す狙いだ。
エアバス社からは、日本のプレイヤーの技術力、特に他産業で培かわれた技術に大きな期待が寄せられている。航空機市場に参入したい日本企業にとってエアバスビジネスは潜在的な可能性を秘めている。
現在、スーパージャンボの異名を取る超大型旅客機「A380」には、日本企業の素材や設備が数多く採用されている。先進複合材料は東レや東邦テナックス、アラミドハニカム材料を昭和飛行機工業、チタンシートを新日鉄住金、三菱重工業が前・後部カーゴドア、SUBARUが垂直尾翼前縁・後縁などを供給している。
このほか日本飛行機は水平尾翼端、パナソニックアビオニクスが機内エンターテインメントシステムをそれぞれ供給するなど、日本企業の貢献度は大きい。
ほかにもジャムコが炭素繊維製プラスチック(CFRP)製フロアビームを、横河電機がコックピットディスプレーモジュールを、ブリヂストンがノーズ・メインランディング用タイヤを供給するなど「日の丸技術」の採用領域は多岐にわたる。
こうした実績を前に、エアバス・ジャパンのステファン・ジヌー社長は「日本企業は品質、納期順守に優れているのが特徴だ。取引をさらに拡大したい」と語る。
エアバスは日本を「次世代機開発に向けた技術や研究開発、デジタル革新のような分野で協業を促進する主要な拠点」(ジヌー社長)と位置付けている。これは自動車やITなど従来とは異なる業種・業界からの新規参入に対する期待の表れでもあり、航空機産業のすそ野拡大を狙う日本政府の思惑とも一致する。
日本のサプライヤーがボーイングやエアバスという巨大航空機メーカーの仕事を行うことは容易なことではない。2大メーカー向けの生産ラインを立ち上げるには、多額の投資を伴う。加えて航空機部品の投資回収期間は数十年単位と長期にわたるため、企業にとって新規投資への判断は慎重にならざるを得ない。
日本の航空機関連の生産額は約1兆8000億円。欧米各国に比べれば規模は小さく、米国の10分の1程度だ。それは裏返せば、伸びしろの大きさの証でもある。世界の民間航空機市場は、年率約5%で増加する旅客需要を背景に、今後20年間で約4万機の新規需要が見込まれる。機体構造やエンジンに加えて、内装品やシステム分野など参画への期待が高まる事業領域が数多く残されている。
海外メーカーが大きく市場を占めている航空機シート。その牙城に切り込んだのが、トヨタ紡織だ。同社は、コンパクトカーから高級車まで年間約700万台分のシートをトヨタ自動車をはじめとしたカーメーカーに提供。最近では、北陸新幹線の新型車両など鉄道車両用シートの開発・製造も手がけるが、航空機分野への参入は2015年が初めて。全日本空輸(ANA)と共同で、国内線普通席用のシートを開発し、これまでにボーイング767―300型機6機に導入されている。
ANA側にとって採用の決め手となったのは、快適性や軽量化による燃費向上に加え、国内メーカーならではの意思疎通の早さや整備部品も含めたコスト削減による長期的なメリット。2015年4月の記者発表時、トヨタ紡織の豊田周平社長(現会長)は「今回やったことをベースに次のステップを検討したい」と意欲を見せていたが、まさに現在は新たな基準に対応するシートのベース骨格の開発に着手している。沼毅社長は「航空機用シートビジネスの基盤を確立したい」と意欲を示す。
日欧の連携促す
欧州では新たなビジネスチャンスが生まれようとしている。
2017年9月―。都内で開かれた日本企業向けの欧エアバス社による説明会には、全国から高い技術力を誇る100社あまりが参加した。この説明会は経済産業省とフランス航空総局(DGAC)が立ち上げた「日仏民間航空機産業協力」に基づくもので、両国政府の下、通信やライトなどの客室技術や3Dプリンター技術など新分野でエアバスと日本企業の連携を促す狙いだ。
エアバス社からは、日本のプレイヤーの技術力、特に他産業で培かわれた技術に大きな期待が寄せられている。航空機市場に参入したい日本企業にとってエアバスビジネスは潜在的な可能性を秘めている。
現在、スーパージャンボの異名を取る超大型旅客機「A380」には、日本企業の素材や設備が数多く採用されている。先進複合材料は東レや東邦テナックス、アラミドハニカム材料を昭和飛行機工業、チタンシートを新日鉄住金、三菱重工業が前・後部カーゴドア、SUBARUが垂直尾翼前縁・後縁などを供給している。
このほか日本飛行機は水平尾翼端、パナソニックアビオニクスが機内エンターテインメントシステムをそれぞれ供給するなど、日本企業の貢献度は大きい。
ほかにもジャムコが炭素繊維製プラスチック(CFRP)製フロアビームを、横河電機がコックピットディスプレーモジュールを、ブリヂストンがノーズ・メインランディング用タイヤを供給するなど「日の丸技術」の採用領域は多岐にわたる。
取引拡大に意欲
こうした実績を前に、エアバス・ジャパンのステファン・ジヌー社長は「日本企業は品質、納期順守に優れているのが特徴だ。取引をさらに拡大したい」と語る。
エアバスは日本を「次世代機開発に向けた技術や研究開発、デジタル革新のような分野で協業を促進する主要な拠点」(ジヌー社長)と位置付けている。これは自動車やITなど従来とは異なる業種・業界からの新規参入に対する期待の表れでもあり、航空機産業のすそ野拡大を狙う日本政府の思惑とも一致する。
日本のサプライヤーがボーイングやエアバスという巨大航空機メーカーの仕事を行うことは容易なことではない。2大メーカー向けの生産ラインを立ち上げるには、多額の投資を伴う。加えて航空機部品の投資回収期間は数十年単位と長期にわたるため、企業にとって新規投資への判断は慎重にならざるを得ない。
日本の航空機関連の生産額は約1兆8000億円。欧米各国に比べれば規模は小さく、米国の10分の1程度だ。それは裏返せば、伸びしろの大きさの証でもある。世界の民間航空機市場は、年率約5%で増加する旅客需要を背景に、今後20年間で約4万機の新規需要が見込まれる。機体構造やエンジンに加えて、内装品やシステム分野など参画への期待が高まる事業領域が数多く残されている。