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取引減少、資金繰り限界、事業売却の時間も無しで破綻した菓子メーカーの話

 道明は、1995年4月に大阪府泉南郡で設立した洋菓子製造業者。航空会社にフィナンシェを納品する菓子メーカーとしてスタートした。クッキーやタルトなどをOEM(相手先ブランド生産)し、2008年3月期には年売上高約6億5000万円を計上。12年4月には和歌山県へ移転し、5月には現代表が就任していた。

 その後もバレンタインデーやクリスマスといった繁忙期を中心に一定の売り上げを確保していたが、14年には主力取引先が自社工場での製造を進めたため、14年3月期の年商は2億6000万円程度にまで激減。売り上げを回復すべく新たな取引先を開拓し、15年には有名ブランド菓子メーカーとの取引を開始した。

 だが、同ブランドが求める水準の商品を製造するために多大なコストが必要になった。新規設備を導入したほか、多数の商品ロスが発生したことで利益の確保は難しい状況が続いた。加えて、繁忙期と閑散期の労働者の調整という課題を長年抱えており、人材の確保や増大する材料の仕入れには金融機関の支援を常に必要だった。

 不動産を担保に入れて資金を捻出するほか、親族や従業員からの借り入れで運営してきたが、18年に入ってからはそれも限界を迎えていた。事業譲渡による再生を模索し、M&A(合併・買収)コンサルタントに相談するも残された時間は少なく、資金ショートを回避できないと判断し、1月31日に事業を停止し、5月17日に和歌山地裁より破産手続き開始決定を受けた。

 従業員の確保の難しさや主力取引先の受注減、新規取引先の商品基準に適合するための投資といった厳しい経営環境にさらされていた道明。季節ごとに街中を彩る華やかな洋菓子の業界だが、その季節性やブランドに求められる水準ゆえに、経営のかじ取りは難しいものがある。(文・帝国データバンク情報部)
企業情報
(株)道明
住所:和歌山県紀の川市豊田36−1
代表:桑代一世氏
資本金:1000万円
年売上高:約2億4900万円(18年1月期)
負債:約1億8600万円
日刊工業新聞2018年8月21日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
徹底的に暗い記事。被災したわけでもなく、不正を働いたわけでもなく、時代の変化について行けなくなったわけでもなく、起死回生を図るも実らず・・・。読めば読むほど悲しい気持ちになりました。

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