パワー半導体、豊田合成は“縦型GaN”に活路

2021年頃量産化へ

 豊田合成が、電力変換や入出力制御に使う窒化ガリウム(GaN)パワー半導体の開発を急いでいる。基板に対して垂直方向に電気を流す構造を採用し、1チップの電流が50アンぺア以上と世界最高クラスの大電流化を実現した。パワー半導体はエネルギーの有効活用の観点から次世代の社会インフラ構築に欠かせない。電気自動車(EV)や送電システム、産業機器向けなど広く需要を見込み2021年頃の量産化を目指す。

 GaNは青色発光ダイオード(LED)の材料として知られる。豊田合成は1980年代から青色LEDの開発に着手し、後にノーベル物理学賞を受賞する赤崎勇名城大学教授らとともに実用化の研究を進めてきた。LED向けに培ったGaNの結晶化の知見などを生かし、高出力と高周波を両立する半導体デバイスを開発中だ。

 シリコンに代わる次世代パワー半導体の市場を巡っては、炭化ケイ素(SiC)が実用化で先行する。例えばJR東海が20年度に導入予定の新型車両「N700S」には、床下の駆動システムにSiC製の素子が採用され、駆動モーターの小型化で1台車当たり約140キログラムの軽量化につながる見込みだ。このほか基板に対して水平に電気を流す「横型」のGaN半導体の実用化研究も進んでおり、豊田合成には「後追いでは勝てない」(同社幹部)との危機感があった。

 そこで豊田合成が採用したのが、基板に対して垂直方向に電気を流す「縦型」構造だ。縦型はチップ全体に電気を流せる。大電流化が可能となり、パワーデバイスの小型化につながる。製造コストなどの課題はあるものの、ワイヤレス給電といった新たな半導体デバイスの市場を開拓できると見る。

 豊田合成は今春、縦型GaNの試作品を出品したところ半導体デバイスメーカーや車載部品メーカーなどから引き合いがあった。橋本正一副社長は「電力システム全体の効率化につなげるため、デバイスメーカーなどとの協業を進めたい」と、他社と連携し実用化する考えを示す。21年をめどに4インチサイズで市場に参入する計画だ。

日刊工業新聞2018年8月20日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
08月21日
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GaNを用いたデバイスの研究には名古屋大学も積極的に取り組む。7月には名古屋市千種区の同大東山キャンパスに「エネルギー変換エレクトロニクス実験施設」を設けた。同施設を中心にGaNの研究や実用化を進める。豊田合成は名大などがつくる産学コンソーシアムにも参画しており、GaNパワー半導体を次世代の成長事業の柱の一つと位置付ける。

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