医療や介護従事者の患者情報共有、特化型SNSは切り札になるか
一体サービスで市場活性化の可能性
医療・介護に特化した会員制交流サイト(SNS)が登場し、医師や看護師、ケアマネジャーなど職種間で患者の情報を共有するサービスが広まっている。高齢化や医療費対策として病院から在宅医療へとシフトが進む中、職種をまたいだ連携を促し、医療と介護サービスを一体で提供できるようにする。厚生労働省は診療報酬改定で多職種の連携を後押しする施策を盛り込んでおり、市場が活性化する可能性がある。
日本は2025年に団塊世代が75歳以上となり、30年には人口の3割を65歳以上が占めると予測される。医療や介護への需要が高まる中で医療費増大の問題も抱えており、これを踏まえて政府が進めているのが高齢者患者の入院治療から在宅医療・介護へのシフトだ。ただ、入院治療と違って在宅医療や介護が難しい点は、医師や訪問看護師、薬剤師などが職種を超えて関与すること。患者にとって医療も介護も一体で利用できるのが基本だが、医療・介護従事者側からすると職種間の壁があり、情報共有しにくい。こうした課題を解決するツールとしてSNSを活用した動きがある。
7月に東証1部に上場した介護ソフトベンダーのカナミックネットワーク。医師や訪問看護師、ヘルパーなどチームで情報共有できるクラウド型のシステムを提供する。非公開型のSNS機能で、患者の医療・介護記録やバイタル(体温、脈拍など)、食事、排せつなど各種情報を整理し、スマホやパソコンでコミュニケーションを図れる。これにより患者に早期介入できる状況を作り、入院治療の回避につなげる。
単なる情報共有だけでなく継続的な改善を促すPDCAと連動したシステムで、業務の一環として使える。山本拓真社長は「このシステムは介護の請求ソフトでもあり、医療・介護の保険請求まで一気通貫で対応できる」と強調する。システム導入は現在までに約2万の事業所、約8万人の医療・介護従事者で実績がある。
「ビジネスモデルを変える」。医療ベンチャーの日本エンブレース(東京都港区)の伊東学社長はこう意気込む。同社が提供するのは、SNSを軸にした医療・介護連携基盤「メディカルケアステーション(MCS)」だ。電子カルテシステムなど病院で使うシステムは通常、医師の一存で決められるが、これは病院が他の施設と連携していないから可能だった。だが、患者や要介護者の視点で発想しなければ、医療と介護のシームレスな連携は難しい。そのため職種をまたがって使えるインフラ基盤として無料で提供する。同社はMCS上でアプリケーション(応用ソフト)の開発などを行うパートナー企業から基盤利用料をもらって収益を上げていく。
MCSはLINEやフェイスブックと同様、簡単なインターフェースで利用できる。タイムラインに随時、患者の情報を写真や文章であげ、チームで共有する。電子カルテのようにフォーマットを統一して統合する動きもあるが、「あえてフォーマットに背を向けた」(同)という。約3万3000の施設に導入され、約7万人が利用する。今後はパートナー企業と治療支援やケア支援などアプリケーションの開発を加速する方針。
IT企業のインターネットイニシアティブ(IIJ)は情報共有できる基盤「電子@連絡帳サービス」を提供し、約60の市町村に導入する。掲示板形式でコミュニケーションをとり、職種ごとの患者情報を共有できる。さらに、自治体の利用を想定したポータルサイトを用意。地域の愛称や方言など地元の人が親しみやすい形でサイトを立ち上げ、連携を進めやすい工夫を凝らしている。
ただ、地域ごとに医療・介護の現場に格差があるのも事実で、IIJの喜多剛志ヘルスケア事業推進部長は「自治体がチーム医療の一員として加わり、地域の医療資源を十分に活用した連携が実現できるように自治体と一緒に検討することが大切だ」と指摘する。
日本は2025年に団塊世代が75歳以上となり、30年には人口の3割を65歳以上が占めると予測される。医療や介護への需要が高まる中で医療費増大の問題も抱えており、これを踏まえて政府が進めているのが高齢者患者の入院治療から在宅医療・介護へのシフトだ。ただ、入院治療と違って在宅医療や介護が難しい点は、医師や訪問看護師、薬剤師などが職種を超えて関与すること。患者にとって医療も介護も一体で利用できるのが基本だが、医療・介護従事者側からすると職種間の壁があり、情報共有しにくい。こうした課題を解決するツールとしてSNSを活用した動きがある。
7月に東証1部に上場した介護ソフトベンダーのカナミックネットワーク。医師や訪問看護師、ヘルパーなどチームで情報共有できるクラウド型のシステムを提供する。非公開型のSNS機能で、患者の医療・介護記録やバイタル(体温、脈拍など)、食事、排せつなど各種情報を整理し、スマホやパソコンでコミュニケーションを図れる。これにより患者に早期介入できる状況を作り、入院治療の回避につなげる。
単なる情報共有だけでなく継続的な改善を促すPDCAと連動したシステムで、業務の一環として使える。山本拓真社長は「このシステムは介護の請求ソフトでもあり、医療・介護の保険請求まで一気通貫で対応できる」と強調する。システム導入は現在までに約2万の事業所、約8万人の医療・介護従事者で実績がある。
「ビジネスモデルを変える」
「ビジネスモデルを変える」。医療ベンチャーの日本エンブレース(東京都港区)の伊東学社長はこう意気込む。同社が提供するのは、SNSを軸にした医療・介護連携基盤「メディカルケアステーション(MCS)」だ。電子カルテシステムなど病院で使うシステムは通常、医師の一存で決められるが、これは病院が他の施設と連携していないから可能だった。だが、患者や要介護者の視点で発想しなければ、医療と介護のシームレスな連携は難しい。そのため職種をまたがって使えるインフラ基盤として無料で提供する。同社はMCS上でアプリケーション(応用ソフト)の開発などを行うパートナー企業から基盤利用料をもらって収益を上げていく。
MCSはLINEやフェイスブックと同様、簡単なインターフェースで利用できる。タイムラインに随時、患者の情報を写真や文章であげ、チームで共有する。電子カルテのようにフォーマットを統一して統合する動きもあるが、「あえてフォーマットに背を向けた」(同)という。約3万3000の施設に導入され、約7万人が利用する。今後はパートナー企業と治療支援やケア支援などアプリケーションの開発を加速する方針。
IT企業のインターネットイニシアティブ(IIJ)は情報共有できる基盤「電子@連絡帳サービス」を提供し、約60の市町村に導入する。掲示板形式でコミュニケーションをとり、職種ごとの患者情報を共有できる。さらに、自治体の利用を想定したポータルサイトを用意。地域の愛称や方言など地元の人が親しみやすい形でサイトを立ち上げ、連携を進めやすい工夫を凝らしている。
ただ、地域ごとに医療・介護の現場に格差があるのも事実で、IIJの喜多剛志ヘルスケア事業推進部長は「自治体がチーム医療の一員として加わり、地域の医療資源を十分に活用した連携が実現できるように自治体と一緒に検討することが大切だ」と指摘する。
日刊工業新聞2018年8月16日