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精密加工業が盛んな長野県諏訪市で輝く企業の成長の源泉とは

テクロック、計測データ収集システム開発
精密加工業が盛んな長野県諏訪市で輝く企業の成長の源泉とは

ゴム・樹脂などの硬さ測定器を製造販売(自動ゴム硬度計)

 テクロックは、ゴムや樹脂など弾性体の硬さ測定器の製造販売でその名を知られる。2年ほど前、工場内に点在する測定データをインターネット上のクラウド環境で収集し、可視化するシステム「SmartMeasure」をベトナムのIT大手企業FPTソフトウエアと共同開発した。これを機に、同製品の普及活動も兼ね、2017年9月に地元の長野県諏訪市で250人規模のセミナーイベント「IoT(モノのインターネット)サミット」を開催した。今年の9月8日に第2弾を、前回比2倍規模で開催する。

 「ゴム・プラスチック硬度計では、国内でトップシェアクラス」と自認する社長の原田健太郎は、以前から工場内で活用されずに眠っている測定データの重要性に着目していた。「計測データは人が数値を確認、データを入力して作業が終了してしまう。もしこれらデータを可視化できれば不良率など改善に大きく寄与する」(原田)からだ。

 そこで原田は、ベトナムFPTの日本法人FPTジャパンと組み、計測データの収集・分析ができるSmartMeasureを開発した。プロトタイプを16年の工作機械見本市に出展したところ、確かな手応えを得て、本格展開に乗り出した。現在は、トライアルを含め、10社で導入が進行中だ。

 同システム導入のメリットについて原田は、「拠点をまたいだ工場内にある計測データの収集が可能。アナログデータもスマートフォンや専用のタブレットで簡単入力できる。もちろん他社の計測機にも対応できる」と、そのオープン性を強調する。自社工場の部品加工部門で導入した例では、「検査人員が3分の1で済むようになった」という。また、県内の有力表面処理メーカーによるトライアル導入では、収集した計測データを大型ディスプレーでリアルタイムに可視化表示することで「これまでとは、異なった観点から製造現場の分析が可能になった」と原田は語る。

(敬称略、文=岡部正広)

【企業プロフィル】
▽所在地=長野県岡谷市成田町2の10の3▽社長=原田健太郎氏▽設立=50年(昭25)7月▽資本金5500万円▽従業員=40人▽売上高=7億円(18年3月期)
日刊工業新聞社2018年8月7日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
17年9月にテクロックが中心になり開催した第1回IoTサミットは、その名も「スワコンバレー」。精密加工業が盛んな諏訪地域を米国のシリコンバレーと掛け合わせた造語に、地元製造業の繁栄を願う気持ちを込めた。同2回目では、慶応義塾大学教授の稲蔭正彦が、第4次産業革命をテーマに基調講演するほか、県内外から40社程度のデモ展示も見込まれる。 (日刊工業新聞社諏訪支局・岡部正広)

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