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3年後に車載電池の売上高8000億円へ。パナソニックの実現シナリオ

テスラ以外の販路開拓
3年後に車載電池の売上高8000億円へ。パナソニックの実現シナリオ

トヨタの豊田章男社長(左)とパナソニックの津賀一宏社長

 パナソニックは車載電池の2021年度(22年3月期)の売上高目標を、18年度見通し比倍増の8000億円に設定した。同社はこれまで、車載電池のみの売上高を公表していなかった。

 大口顧客の電気自動車(EV)メーカー、米テスラの新型車生産の遅れが解消しつつあり、2倍以上の売上高を見込む。トヨタ自動車やホンダもプラグインハイブリッド車(PHV)などへ採用したことも後押しする。

 パナソニックは自動車向け事業全体で、21年度に18年度比約4割増の売上高2兆5000億円を掲げる。車載電池はその最大のけん引役となる。ただ、同社の車載電池事業は、先行投資が響き営業損益の赤字が膨らんだ。経営上は我慢の時期が続く。

 調査会社の富士経済(東京都中央区)がまとめた調査結果によると、21年度の車載リチウムイオン電池市場は1兆8000億円強。パナソニックが21年度に8000億円を売り上げると、金額シェアは4割を超える。

 同社は車載電池の世界大手。同じく世界大手の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)がシェア首位に躍り出たと言われている。だが、パナソニックの計画通りなら、同社の地位は揺るがない。

 伊藤好生副社長は車載電池事業のけん引役候補を「一言で言えばテスラ」と期待する。同社の人気EV「モデル3」の生産遅れが解消されつつある。

 17年夏に発売した際のモデル3は生産量が増えず、パナソニックがテスラと共同出資する米国の電池工場は稼働率が低迷。「テスラリスク」とも呼ばれた。

 一方、電池の採用はテスラ以外へ広がる。あるサプライヤーは「パナソニックからの受注量が予想以上に増え、対応できるか不安」と、うれしい悲鳴を上げる。

 トヨタやホンダなどの車種に搭載される電池需要が旺盛なためだ。パナソニックも需要に応えるべく、兵庫県姫路市の既存工場を使って、19年度に電池生産を始める。
日刊工業新聞2018年8月8日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ただ、利益貢献はこれから。18年4―6月期は米電池工場向けの投資が増え、電池事業の営業損益は84億円の赤字(前年同期は17億円の赤字)。同社は車載電池を性能と品質で差別化し、液晶パネルのような価格下落の懸念は否定する。ただ「20年代半ばまでは先行投資の期間」(田村憲司常務執行役員)。利益貢献はもう少し先になる。 (日刊工業新聞大阪支社・平岡乾)

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