米国発の貿易摩擦…自動車業界に立ちこめる“霧”

自動車・自動車部品の関税引き上げが実現すれば大きな打撃に

  • 1
  • 0
米国発の貿易摩擦が緩和に向かうかが今後の焦点になる(イメージ)
 自動車メーカーの業績の先行きに不透明感が漂っている。“霧”の発生源は米国発の貿易摩擦だ。トランプ米政権が発動した鉄鋼とアルミニウムへの追加関税に伴い原材料価格に上昇圧力がかかっている。また、検討されている自動車・自動車部品の関税引き上げが実現すれば大きな打撃になる。自動車メーカーの2019年3月期は、ホンダが4―6月期決算で通期見通しを上方修正するなど、まずまずの滑り出しとなったが、楽観できない状況が続く。

 トヨタ自動車の18年4―6月期連結決算(米国会計基準)は北米、欧州、アジアでの販売好調で純利益が過去最高を更新した。ただ通期予想は据え置いた。不安要素の一つが原材料価格の高騰。「原油、アルミ、鋼材が上がっており、前期と比べ2000億円ぐらい原材料費が増える」(白柳正義専務役員)。

 日産自動車も通期では原材料費が前期比800億円の営業損益の悪化要因になると見込むが「市況価格はまだ上がっており、800億円で収まらない懸念がある」(田川丈二常務執行役員)と話す。

 トランプ政権は3月に、米国の生産者を守ることが安全保障上の利益につながるとし鉄鋼とアルミの関税を引き上げた。これに伴い輸入品以外の価格も上がっているのが実態で、現地調達するアルミや鉄鋼も費用増が避けられない状況。白柳トヨタ専務役員は「(価格上昇の背景には)需給以外のそういった(トランプ関税)要素もある」と指摘する。

 またトランプ政権が検討する自動車・自動車部品の追加関税も懸念材料。発動された場合、デンソーは年700億―800億円程度の負担増になるとし、トヨタは米国生産する主力セダン「カムリ」のコストが1800ドル上がると試算する。吉田守孝トヨタ副社長は「当社ですべてコストアップをカバーできない。価格に転嫁すると販売台数は減るだろう」と表情を曇らせる。

 3日までに、上場乗用車メーカー7社のうち、スバルを除く6社が18年4―6月期決算を公表しトヨタ、ホンダ、スズキ、三菱自動車の4社が増収増益だった。この好調を維持するには、米国発の貿易摩擦が緩和に向かうかが重要な要素の一つになる。
(文=後藤信之)

日刊工業新聞2018年8月6日

COMMENT

中西孝樹
ナカニシ自動車産業リサーチ
代表

2017年実績で、米国への日本からの完成車輸入金額は406億ドル、自動車部品が82億ドル。単純な資産で行けばこの20~25%の追加関税が賦課されるリスクがある。現調化が進む鉄・アルミは直接的な影響ではなく、現地調達の市況が高騰しており、この影響は来年1月の値ぎめから影響が顕在化へ。米国の事業環境は大きなリスクを抱えている。しかし、1Qは相対的に日本車の業績は欧米と比較して良好だった。これはアジア事業の成長があったため。

関連する記事はこちら

特集