「SDGsをゲームで体験」は何のため?

鼓童文化財団、中小企業も学びの場を提供

 ESD(持続可能な開発のための教育)が広がりを見せている。「持続可能な開発目標(SDGs)」の認知度が急速に高まり、社会課題解決に貢献したいと思った企業や地域、市民がESDに参加している。ESDに通じる国の方針も見直され、企業や地域の役割が重視された。

 ESDとは持続可能な社会づくりを担う人材教育。決まったテーマや教科書はなく、何を学ぶかは自由。地球規模の問題を扱わなくても、身近なテーマから取り組んでもいい。例えば地域によって高齢化、教育、防災など課題はさまざまだ。その解決策を学校や職場といった場所、性別や年齢を問わず考えるのがESDだ。

 ESD活動支援センターの柴尾智子センター次長は「SDGsはESDの追い風」と話す。SDGsが知られるようになり「自分も貢献したい」「何ができるか知りたい」と思う人が増え、ESDへの参加が広がった。「SDGsには何かをしたいと思わせるものがある」と実感する。

 実際にESD推進拠点が増えている。市町村などの地域ESD活動推進拠点が40以上整ってきた。教育委員会などの学校関係やNPOが多いが、藤クリーン(岡山市)のような中小企業、鼓童文化財団(佐渡市)のような芸能集団もある。共通するのは地域に根ざした活動をしていることだ。柴尾センター次長は「ESDの普及はSDGsにも追い風」と大きな潮流を感じている。
 6月末、「環境教育等促進法基本方針」の変更が閣議決定された。「体験活動の意義を捉え直し、地域や民間企業の”体験の機会の場”の積極的な活用を図る」と方向性が示され、あらためて地域、民間企業によるESD推進に期待がかかる。

 【事例1】
 企業も社員教育や学校への出前教育でESDに取り組む。
 損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントで6日、ゲームをしながらSDGsを学ぶ研修会が開かれた。参加した社員50人は2時間、SDGs達成を目指す世界を体験した。

 ゲーム名は「2030SDGs」で、一般社団法人「イマココラボ」が制作した。損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントは社員が5、6人ずつのチームに分かれて参加した。各チームに目標が与えられ、メンバーは配られたカードから実行するプロジェクトを選んで目標達成を目指す。「交通インフラ」「大規模農業」「女性議員比率アップ」「リサイクル法強化」などプロジェクトはさまざまだ。

 ゲームがスタートすると会場では作戦会議が一斉に始まった。プロジェクトによって投資額や所要時間が違うため、各チームは手持ちの「お金」「時間」を見比べながら実行するカードを選択する。
 しばらくすると「中間評価」の時間が来た。設定は「202X年」、ホワイトボードには「経済21 環境3 社会1」とある。各チームが自分たちの目標に向けて取り組んだプロジェクトによって、世の中がどう変化したが示された。
 司会者は「経済は絶好調、しかし環境は危機的な状況で、社会には貧富の格差が拡大している」と解説した。

 休憩を挟んでゲームが再開し、「2030年」を迎えると終了。「経済17 環境10 社会13」と明らかに環境と社会が改善した。「前半は自分のチーム、後半は世界と、気にすることが変わったのでは」という司会の言葉に参加者も納得していた。社員はゲームで経済、社会、環境を同時に良くする行動をとり、SDGs達成を体験した。

 資産運用会社である損保ジャパン日本興亜アセットマネジメントはESG(環境・社会・企業統治)を基準とした投資拡大に取り組む。投資先のESGの水準チェックにSDGsを活用する。今回のゲームは社員のSDGsへの理解を高め、目利き力を養おうとイマココラボに依頼した。

 【事例2、LIXIL】
 家の模型のリビングの窓を開けてみる。窓の外から小型扇風機で風を送り込み、子ども部屋の窓も開けてみる。すると窓の前にある羽根が勢いよく回り出す。扇風機の風がリビングの窓から入り、廊下を抜けて子ども部屋の窓から出ていった。

 模型はLIXILが小学校への出前授業用に制作した教材だ。家中すべての窓を開けると、どの窓も羽根の回転が弱くなったり、止まったりする。家の中の風通りがなくなった。

 営業本部の芦田亜紀営業企画グループ主幹は「子どもたちは親から、涼しくするために窓すべてを開けなさいと言われた経験があると思う。家全体を一つの部屋と考えて風の入り口、出口を作るように窓を開けたると風が流れる」と説明する。

 大きなガラス窓が取り付けられた箱も教材だ。窓に手をかざすと内部の照明からの熱を感じる窓、感じない窓がある。ガラス3枚の複層窓は外に熱を逃がさず、断熱性があると分かる。ガラス1枚なのに外に伝わる熱が少ない窓もある。室内側に広げたカーテンで断熱効果が高まったのだ。

 風通を確認する家の模型、断熱を体験する箱はLIXILが6月下旬から始めた出前授業プログラム「健康と環境によい住まい方」の教材だ。

 省エネは大切だが、真夏でもエアコンの使用を控えてしまい室内で熱中症になる人が多い。小学生高学年に自然の力を生かした工夫で健康にも、環境にも配慮した生活を実践する意欲を持ってもらうとプログラムを作った。

 LIXILは他にも自社のサステナビリティ重要課題につながる出前授業に取り組む。「水から学ぶ」と題した授業は10年に開始。トイレ、お風呂など水まわり設備を扱う企業として「水を大切にしたい」と思う心を育てる授業を提供する。

 15年からは「トイレが世界を救う!」を開始。クイズを交えながらトイレ普及による衛生課題の解決を教えると「途上国には身近にトイレがない人がいると知り、ショックを受ける児童がいる」(芦田主幹)という。

 出前授業の先生は営業の社員だ。授業は小学生に社会課題を知る機会を提供する役割があるが、「社員も自分たちの仕事が世の中に役立っていると理解できる」(同)と話す。社員が本業と社会課題解決との結びつきを再確認できれば、仕事のやりがいにつながる。それがLIXILのサステナビリティへとつながる。

日刊工業新聞18年7月31日第2部「地球環境特集」

松木 喬

松木 喬
08月01日
この記事のファシリテーター

「SDGsゲーム」、いまCSR関係者の間で話題です。見ていて「よくできている」と感じ、体験した訳でもないのに「納得」しました。「ESD」は聞き慣れない言葉かもしれません。しかし地域拠点は立候補制にもかかわらず、中小企業や鼓童も参加していて、志を持った方々が地域に多いことをあらためて感じました。

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