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“時短家電”売れ行き好調、共働き世帯の救世主に

加熱調理器や冷蔵庫など新製品続々
“時短家電”売れ行き好調、共働き世帯の救世主に

日立アプライアンスの「ヘルシーシェフ」は調理の手間を省ける

 共働き世帯が1200万世帯に迫る中、各家庭で家事にかけられる時間が減っている。こうしたライフスタイルの変化を受け、白物家電各社は家事の負担を減らすことのできる“時短”をうたった製品を続々と市場に投入しており、売れ行きも好調だ。新しい家電が家庭内での働き方改革の切り札になるかもしれない。

加熱調理器−手間かけずにおいしさ実現


 日立アプライアンス(東京都港区)国内商品企画部の湧広修主任は、オーブンレンジに対する消費者ニーズの変化について、「省手間と時短が求められている。さらに、おいしくヘルシーな料理が作れることが必要」と分析する。同社のオーブンレンジ「ヘルシーシェフ」に搭載している機能「Wスキャン」は、食品の重さと初期温度、温度変化をスキャンして加熱する。分量に合わせて火加減をオーブンレンジが調整する。さらに人数や分量の設定が不要なため、一般的な同様の製品に比べて調理の手間を省けるのが特徴だ。

 Wスキャンは、冷凍したご飯や冷蔵庫で保存した食品を温める際にも時短効果を発揮する。食品の重さと容器を含む初期温度を測るほか、温度変化から食品と容器のバランスを推測。温める分量を見分けられる。

 一方、18年で発売20周年を迎えた三菱電機のIHクッキングヒーターの現在の製品は、鍋の中身を自動でかき混ぜる「対流煮込み加熱〈プラス〉」機能を搭載している。自動で加熱と停止を繰り返し、かき混ぜ効果のある交互対流を発生させる。そのため具材にうま味をしみ込ませつつ、煮くずれや焦げつきを抑制できる。カレーを作る際などに、かき混ぜる手間を省ける。

 さらに鍋の湯の沸騰をキープしながら、吹きこぼれを抑える機能も備える。外向き対流と内向き対流を自動で起こすことで、ムラのない加熱が可能だ。

 料理教室の運営を手がけるツジウエルネスクッキング(大阪市中央区)の近鉄あべのハルカス校の佐川進校長は、「自動で加熱と停止が行われるため、吹きこぼれがない。鍋の中身も滞留せず、鍋の底がこげない」と使いやすさを語る。

冷蔵庫−狭い住宅でも大容量で使う


 時短ニーズは、冷蔵庫にも及ぶ。パナソニックは、横幅60センチメートルとスリムながらも、容量を従来より1割増やし450リットルとした冷蔵庫を10月に発売する。三菱電機は同様のスリム冷蔵庫を15年から投入したほか、東芝が18年3月に幅60センチメートルで容量465リットルの製品を発売。「幅60センチ、容量450リットル超」の冷蔵庫が商品トレンドになりつつある。

 一部の集合住宅では、幅60センチでないと冷蔵庫を設置できないレイアウトになっている。そうした制限のある住まいでも、より多くの食材を入れられる冷蔵庫のニーズが高まっている。

 時間の少ない共働き世帯は、週末に食材を大量に購入することが多い。さらに「まとめ買い」だけでなく、週末に「まとめて作り置き」する家庭も増えており、みそ汁やカレーなど、「料理を鍋ごと冷蔵庫で保存する使われ方が増えた」(パナソニック)。大容量の冷蔵庫なら鍋料理を容器に移し替える手間が省ける。

 パナソニックは冷蔵庫スリム化にあたり、一部の部品のサイズを半減させるなどして実現。三菱電機は断熱材シートの成形技術を進化させ、シートを薄くした。日本の狭い住宅環境で、より大容量の冷蔵庫を使いたいニーズに応えるため、各社とも工夫を凝らす。

洗濯機−少ないすすぎ水、洗剤残り減らす


 一方、洗濯機でも時短効果をうたう製品は多い。共働き世帯の場合、平日は夫婦ともに仕事があり、洗濯は休日にまとめて片付けたいという需要がある。ただ、東芝ライフスタイル(川崎市川崎区)によると、縦型洗濯機を使う既婚女性の半数以上が衣類の洗剤残りに不満や不安を感じるという。

 そこで同社は、洗剤のすすぎ残りの低減とすすぎに使う水量を少なくする節水ニーズの両方に耳を傾けた。

 同社の縦型洗濯機「ZABOON(ザブーン)」の新製品には、直径1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)未満と、繊維のすき間よりも小さな泡で衣類を洗う機能「ウルトラファインバブル」を、従来の洗い工程に加えて新たに「すすぎ」工程にも導入した。

 繊維に残った洗剤の洗浄成分をウルトラファインバブルが吸着して取り除くため、すすぎの回数や水量を増やさずに、すすぎ効果を向上した。

 労働政策研究・研修機構によると2017年の共働き世帯数は1188万世帯。専業主婦世帯が急減する一方、共働き世帯は80年と比べておよそ2倍に増えており、ライフスタイルとしてごく一般的になった。白物家電各社にとっては増え続ける共働き世帯に狙いを定めた商品の開発は自然の流れといえる。

 
日刊工業新聞2018年7月31日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
家事にかける時間が減ればその分、余暇や休養、子どもとの触れあいなどに時間を割ける。時短家電は何かと忙しい共働き世帯にとって必需品の一つになったと言えるかもしれない。 (日刊工業新聞社・福沢尚季、大阪支社・平岡乾)

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