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旭化成の米セージ買収、国内の自動車内装材向けサプライチェーンに変化も

旭化成の米セージ買収、国内の自動車内装材向けサプライチェーンに変化も

会見する小堀秀毅社長(左)と吉田浩専務執行役員

 旭化成は19日、自動車用シート材大手の米セージ・オートモーティブ・インテリアズを買収すると発表した。株式取得額は約7億ドル(約791億円)で、純有利子負債を加えた買収額は約10億6000万ドル(約1197億円)。旭化成は人工皮革「ラムース」を供給しており、買収で2次サプライヤーの地位を手に入れる。“川下”とのパイプを太くすることで、次世代の車内空間に向けた製品開発に磨きをかける。

 セージの全株式を取得し、完全子会社とする。小堀秀毅社長は会見で、今回の買収により「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)が車内空間にもたらす変化をいち早く捉え、積極的に提案していきたい」と述べた。まずは両社の製品をそれぞれの販路で拡販するほか、セージが強みを持つ内装材の提案力やデザイン力、加工技術を訴求。相乗効果により各種センサーとシートの組み合わせや、新たな素材開発を加速させる狙い。

 また旭化成は2019年度からの次期中期経営計画に、ラムースの生産ライン新設を盛り込む方針を明らかにした。買収に伴う事業拡大に対応する。19年4月には宮崎県延岡市で第3ラインが稼働する計画で、これに続く4番目のラインとなる。繊維事業本部長の工藤幸四郎上席執行役員は「国内のほか、セージの顧客が多い欧州や米国での新設も選択肢になる」との見方を示した。
日刊工業新聞2018年7月20日
峯岸研一
峯岸研一 Minegishi Kenichi フリーランス
旭化成の人工皮革「ラムース」が新たな段階を迎えた、と言えます。「ラムース」は2014年頃から拡大基調を持続、2017年には1系列の増設(2019年稼働予定)に踏み切りました。その要因の一つにはセージ社が、「ラムース」の海外におけるサプライチェーンを担っているイタリア・MIKO社を買収(新会社には旭化成も参加)したことがあります。セージ社との関係強化もあり米国市場を中心にカーシ―ト向け自動車内装材の採用に弾みが付いています。  ただ、海外と国内では状況が異なります。日本で「ラムース」は生地売りに留まり、自動車内装材向け加工品は、他のブランド名で販売されています。旭化成がセージ社の買収により、マイクロファイバー原糸―染色仕上げ加工―製品販売に至る一貫体制を整えたことで、言いすぎかもしれませんが国内の自動車内装材向けサプライチェーンに変化の可能性が出てきました。

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