米アマゾンに対抗するために楽天が開発する「クリエイティブAI」とは?

楽天技術研究所の森正弥代表に聞く

 楽天の研究開発機関である楽天技術研究所(東京都世田谷区)は、人工知能(AI)を使った顧客分析に力を入れている。電子商取引(EC)サイト「楽天市場」など楽天グループのサービスに活用し、顧客満足度を高める。EC市場は米アマゾンなどが存在感を増し競争が激化する。楽天は約9500万件の顧客データを基にどのようなサービスを生み出すのか。楽天技術研究所の森正弥代表に戦略を聞いた。

 ―米シリコンバレーに世界5カ所目となる開発拠点を4月に設立しました。重点研究領域は。
 「専門知識に基づき、絵を描いたり映画の脚本を書いたりできる『クリエイティブAI』の研究を進めている。我々は商品や店舗情報のデータだけでなく、購入客の商品評価レビューをにぎっていることが強み。楽天市場の商品説明文を高度化したい」

 ―具体的には。
 「営業担当者は商品を売る時、お客さまに合わせて分かりやすく説明する。それと同様に、購入客の評価レビューをAIが分析して、商品のアピールポイントを組み込んだ商品説明文を作成する。この商品は贈与品に向いているなど、売り手(出店店舗)の想定とは違った実際のニーズが見えてくる」

 ―音声検索機能の高度化も進めています。
 「楽天市場では『かわいい』などの形容詞を使って検索する人も多い。例えば『かわいい日本酒』といっても『かわいい』の定義は個人で異なるが、前後の検索履歴を参照すると『かわいい』が何を指しているのか大体分かる。逆に、ユーザーが具体的な商品名で検索すると、商品の特定が難しい。今後は形容詞を用いた曖昧な検索や具体的な名称の検索でも対応できるようにする。ユーザーが欲しいものを短いステップで探しだし、ストレスのない買い物を実現したい」

 ―遺伝子検査サービス大手のジェネシスヘルスケア(東京都渋谷区)と共同で「遺伝子ラボ」を設立した狙いは。
 「我々が培った技術で医療分野に貢献することが目的だ。まずは、個人の遺伝子データをサービスに生かす余地があるか検証する。例えば、購入履歴などからお酒に強いと分析した楽天会員が、遺伝子上も当てはまるのか確認する。ただ、遺伝子データをビジネスに応用できるかどうかは、個人的には懐疑的だ」

 ―何が課題になりますか。
 「楽天会員の購入履歴は必ずしも個人を表現していない。自分の楽天IDを使って友人のプレゼントを購入することも多いからだ。ジェネシスヘルスケアの顧客で同意を得た人を対象として、慎重に分析を進めていきたい」

日刊工業新聞2018年7月4日

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
07月07日
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楽天技術研究所は140人の研究者を有し、その8割以上が外国籍。年内には新たに複数の海外拠点を設立する計画で「クリエイティブAI」などの研究を加速する。既に中国のEC最大手の阿里巴巴(アリババ)集団などはAIをビジネスで大規模に展開している。新技術を楽天のサービスに搭載していかに競争力を高めていくのかが、グループ全体の成長を左右しそうだ。
(日刊工業新聞社、大城蕗子)

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