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トヨタの元チーフエンジニア、次は巨大部品メーカーをハンドリング

アイシン精機・伊勢清貴社長
 《トヨタ自動車時代はチーフエンジニアや高級車部門、先進技術トップなどを担った。変化に挑むべく、猛烈な危機感を口にする》

 「100年に一度の大変革が実際に起きている。アイシングループは足元の業績こそ右肩上がりだが、いつ『右肩下がり』に転じるか知れない。簡単に電気自動車(EV)は普及しないと高をくくっているとかつての(デジタル化が一気に進んだ)フィルム業界と同じ事になる。聖域なきスクラップ・アンド・ビルドを進める」

《駆動系中心に1万点以上の車部品を手がける同社。グループ企業間にまたがる仮想カンパニー制を敷き、特に電動化対応を急ぐ》

 「パワートレーンの電動化はアイシングループが生き残る上で必須。自動変速機(AT)とモーターを組み合わせたハイブリッド車(HV)向けの新製品は、一部の車種で生産準備に入った。EV向け駆動ユニットの開発も進める。当社はトヨタのHVシステムを共同開発してきた実績もある。電動化対応のため、パワトレ部門の増員を含めて検討する」

《次世代技術の開発では、トヨタグループ全体の連携も焦点》

 「トヨタやデンソーと設立した『TRI―AD』では当社はドライバーモニターシステムの開発を担当する。自動運転に必要な人工知能(AI)の技術者は足りておらず、トヨタグループで結集して良い製品を作りたい」
【略歴】
伊勢清貴(いせ・きよたか)80年(昭55)京大院精密工学科修了、同年トヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)入社。07年常務役員、13年専務役員、同年取締役。18年アイシン精機副社長。兵庫県出身、63歳。6月19日就任。

トヨタとドライバーモニターシステム


 アイシン精機は自動運転車のドライバーモニターシステム(DMS)をトヨタ自動車と共同開発する。トヨタがアイシンやデンソーと東京都内に設立した自動運転技術の開発会社「TRI―AD」に、アイシンのDMS開発者約20人が参画する。新会社にはトヨタのほかデンソーも加わる。トヨタグループの技術力を集めて自動運転を実用化する方針だ。

 DMSは車載カメラなどのセンサーで運転手の顔の向きやまぶたの開閉を検知する。既に運転中の脇見防止などに使われて、将来は自動と手動の運転を切り替える際などに必須の技術とされる。

 TRI―ADはトヨタグループ各社が個別に進めてきた自動運転での連携を強化する役割を持つ。アイシンは新会社を通じ自動運転を構成する「認知」「判断」「操作」の3要素のうち認知に当たるDMSを担当する。

 TRI―ADには3社で3000億円以上を投じる。開発体制はトヨタを中心に1000人規模を目指す。トヨタが16年に米シリコンバレーに設立した人工知能(AI)開発会社「TRI」とも連携し、自動運転の実用化を進める。

 アイシンは2000年代からトヨタの高級車向けなどにDMSを供給してきた。DMSを使った事故回避システムなども同社グループで開発している。

 デンソーも3次元レーザーレーダー「LiDAR(ライダー)」技術を強みに、新会社でセンシングなどの領域を担うとみられる。
カメラなどで運転手の状態を検知する(アイシンの開発施設)


日刊工業新聞2018年7月20日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
推理小説などを好んで読むという。休日はカメラを片手に近所の動植物園へ。

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