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旅行消費でみる「米中」比較

 経済産業省経済解析室で試作している「訪日外国人消費指数」の2017年第4四半期分では、中国とアメリカの「訪日外客数」及び「1人当たり旅行消費額」の推移について比較してみたので、ここで紹介する。

 「訪日外国人消費指数」では、訪日外国人全体の動きを示す指数のほか、アジアと欧米の2地域の指数を作成している。今回の2017年第4四半期分では、アジア、欧米の両地域でそれぞれ最も消費ウェイトの高い「中国」と「アメリカ」に注目し、この2カ国について年単位での推移の比較を行った。

 まず、両国の「訪日外客数」の推移についてみてみる。2017年の年間訪日客は、中国が736万人、アメリカが137万人。中国からの訪日客数は、アメリカからの訪日客数の5倍以上にもなった。これは、アジア2位となる韓国の714万人をも凌ぐ、圧倒的な数値である。

 また、訪日外国人消費指数の基準年である2010年と比較すると、中国は2010年の141万人に対し2017年は5倍以上に増加、他方、アメリカは2010年の73万人に対し2017年はおおむね2倍程度の増加だった。中国は2014年以降に急拡大をみせているのに対し、アメリカは、じわりじわりと訪日客数を増やしており、両国の動きは対照的である。
                  

 次に、「1人当たり旅行消費額※」の推移についてみてみる。(※ここでは、訪日外国人消費動向調査における「1人当たり旅行消費額」を、消費者物価指数を用いて実質化したもので比較している)。

 まず、左側のグラフで、中国とアメリカの1人当たり旅行消費額を比較すると、2010年から2017年の間、いずれの年も中国がアメリカを上回っていることがわかる。また、中国は2015年をピークに低下傾向、アメリカは2013年をピークに横ばい傾向にあるが、ともに、  2010年(基準年)と比較すると2017年は上昇している。

 中国からの訪日客の1人当たり消費額がピークとなった2015年は、訪日客による「爆買い」が話題となった年だ。こうしてみると、この「爆買い」が、中国からの訪日客の1人当たり旅行消費額の拡大に表れているのかもしれない。

 次に、右側のグラフで、中国とアメリカの1人当たり旅行消費額を、為替情報を用いて母国通貨価値に換算した指数をみてみる。こちらでは、中国、アメリカともに1人当たり旅行消費額は2011年をピークに低下している。ここ数年は両国とも横ばい傾向にあるが、ともに、2010年(基準年)と比較すると2017年は低下している。

 1人当たり旅行消費額は、わが国側では拡大しているととれるが、これは為替の影響によるもので、訪日客側の母国通貨価値で捉えると、実は近年縮小しているという、非常に興味深い動きがみえてくる。
                 

 最後に、中国とアメリカそれぞれの国別指数の前年比に対する、「訪日外客数」と「1人当たり旅行消費額」の影響度合い(寄与度)をみてみる。

 中国、アメリカともに、グラフではオレンジ色の面積、すなわち「訪日外客数」の寄与が大きいことがわかる。アメリカは、2013年以前は「1人当たり旅行消費額」の寄与がかなり高くなっていたが、2014年以降は「訪日外客数」が圧倒的になった。中国に至っては、2011年以降、一貫して「訪日外客数」の寄与が非常に高くなっている。

 訪日外国人消費指数全体の動きは、常にアジア指数と似たような動きをみせているが、これは、アジアからの訪日客数が欧米に比べて圧倒的に大きいことが影響しているということだろう。
                

 
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 中国と米国の「訪日外客数」と「1人当たり旅行消費額」について、その推移を比較してみたところ、中国からの訪日客による影響が圧倒的に大きいことが改めてわかった。また、1人当たり旅行消費額は、日本の供給側からみたものと訪日客の母国通貨建てでみたものとでは、異なった推移をみせているという面白い結果。

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