銀行や生保、石炭火力の投融資に高いハードル

ESG拡大で合理的判断

  • 0
  • 6
先進国での脱石炭の流れが進む(写真はイメージ)
 国内金融機関に石炭火力発電への投融資を厳格化する動きが広がっている。三井住友銀行は低効率案件への出資停止をメガバンクで初めて表明。先進国での脱石炭の流れやESG(環境・社会・企業統治)投資の拡大を受け、石炭火力向け投融資は転換点を迎える。半面、発電コストの低さから新興国では石炭火力の需要は今後も拡大する見通し。石炭火力で世界最先端の技術を持つ日本の競争力維持も含め、金融機関には厳格かつ合理的な判断が求められそうだ。

 石炭火力をめぐっては温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」発効以降、欧米の金融機関で投資撤退の実施や意向の表明が相次ぐ。こうした中、三井住友銀は新規融資に関して、二酸化炭素(CO2)排出量の少ない高効率な発電技術「超々臨界圧(USC)」以上の案件に絞って出資する方針を18日から適用。石炭火力は低コストだが環境への負荷が大きいことから、与信判断の厳格化を決めた。

 ただ、石炭火力は新興国などのエネルギー不足解決に資することから、適用日以前に支援表明した案件、日本政府や国際開発機関などの支援が確認できる場合は、慎重に対応を検討する。

 みずほ銀行も石炭火力を資金使途とする与信案件への対応方針を策定し、15日から運用を始めた。与信の判断材料として国際的な基準などを参考にし、案件ごとに適切な投融資を実行する考え。

 三菱UFJフィナンシャル・グループは、5月に環境保護などに関する融資方針を公表。平野信行社長は「再生可能エネルギーへの融資を強化しつつ石炭火力は経済協力開発機構(OECD)のガイドラインを参考にファイナンスの可否を考える」方針を示した。

 一方、生命保険会社では日本生命保険が国内外の石炭火力向け新規投融資をやめる検討に入った。第一生命保険も海外のプロジェクトファイナンスへの出資停止を決めており、他社にも影響する可能性がある。

 向かい風が吹き付ける石炭火力だが世界の発電電力量の約37%占め、新興国経済の発展とともに、需要は拡大する見通し。石炭の可採年数は約150年と言われ、天然ガスや石油の約3倍。価格は原油や液化天然ガス(LNG)の2分の1から3分の1程度で低位安定している。

 政府のインフラシステム輸出戦略でも、エネルギー安全保障や経済性の観点から石炭をエネルギー源として選択せざるを得ない国に対して「OECDルールを踏まえつつ、相手国のエネルギー政策や気候変動対策と整合的な形で原則、世界最新鋭であるUSC以上の発電設備について導入を支援」することが明記された。

 日本はクリーンコール技術で世界最先端を走る。Jパワーの磯子石炭火力発電所ではリプレース後に、窒素酸化物(NOx)など大気汚染物質を9割削減。世界で火力発電設備を手がける三菱重工業の宮永俊一社長は「環境負荷の少ない石炭火力を供給するのも社会的責任だ」と話す。最先端技術を自ら放棄する必要性に懐疑的な見方もある。
(文=長塚崇寛、鈴木真央)

日刊工業新聞2018年6月21日

COMMENT

長塚崇寛
編集局ニュースセンター
デスク

融資基準の厳格化により高効率で環境性能の高い最新鋭設備の導入を促す効果が期待でき、金融機関は複眼思考で投融資の判断に臨む。

関連する記事はこちら

特集