岐路に立つ石炭火力。国内で計画見直し相次ぐ
設備利用率は採算割れの50%台に!?
国内で石炭火力発電所の建設計画が岐路に立っている。電力需要の低下や、地球温暖化の観点から環境負荷が大きいことが背景にある。福島第一原発事故後の原発稼働停止に伴い、全国で増設計画が打ち出されたが、中止する動きも出始めた。日本は電力の大半を火力発電に依存しており、石炭火力は3割超を占める。1キロワット時当たりの発電コストはLNGより安いが、CO2排出量はLNGの2倍とされる。
2016年4月に電力小売りの全面自由化が開始したときに、安価な電源として、電力会社や参入企業が次々と新増設計画を打ち出した。現在、石炭火力発電所の新増設は26年度までに41基が計画されており、計約1800万キロワットにおよぶ。廃止予定分を差し引いても、増設計画が実行されれば1649万キロワットの容量増になる。
自然エネルギー財団のまとめでは、採算性の前提として、70%の設備利用率を前提に置いている可能性が高いものの、自然エネルギー利用の拡大や、原子力発電所の再稼働などで50%台まで低下する可能性があると指摘する。これは省エネなどが進まず電力需要を現在と同程度に見込んだ保守的な試算だ。
実際、石炭火力発電所の建設計画を中止する動きも出始めている。関西電力と東燃ゼネラル石油(現JXTGホールディングス)は3月、千葉県市原市の大型石炭火力発電所の建設を断念。関電は1月にも、兵庫県赤穂市の火力発電所で石油から石炭への建て替え計画も中止した。
すでに世界的には、温室効果ガス排出削減の取り組みが加速し、化石燃料の利用を縮小する動きが広がる。ランスや英国は石炭火力の廃止に向けての方針を発表。ドイツも石炭への依存度を減らす方針だ。中国も、石炭火力の増設の抑制を示している。
日本も温室効果ガス排出量を30年度に13年度比26%、50年度に80%減らす目標を掲げる。ただ、新増設予定の石炭火力発電所が全て稼働すると、30年度目標の達成すら難しい。
環境省は相次ぐ石炭火力発電所の新設に難色を示し続ける。CO2排出への課税などを検討する「カーボンプライシング」の議論も始めた。電気事業連合会の勝野哲会長は「国際競争力への影響の観点などから慎重に議論するべき」とけん制する。
(文=栗下直也)
2016年4月に電力小売りの全面自由化が開始したときに、安価な電源として、電力会社や参入企業が次々と新増設計画を打ち出した。現在、石炭火力発電所の新増設は26年度までに41基が計画されており、計約1800万キロワットにおよぶ。廃止予定分を差し引いても、増設計画が実行されれば1649万キロワットの容量増になる。
自然エネルギー財団のまとめでは、採算性の前提として、70%の設備利用率を前提に置いている可能性が高いものの、自然エネルギー利用の拡大や、原子力発電所の再稼働などで50%台まで低下する可能性があると指摘する。これは省エネなどが進まず電力需要を現在と同程度に見込んだ保守的な試算だ。
実際、石炭火力発電所の建設計画を中止する動きも出始めている。関西電力と東燃ゼネラル石油(現JXTGホールディングス)は3月、千葉県市原市の大型石炭火力発電所の建設を断念。関電は1月にも、兵庫県赤穂市の火力発電所で石油から石炭への建て替え計画も中止した。
すでに世界的には、温室効果ガス排出削減の取り組みが加速し、化石燃料の利用を縮小する動きが広がる。ランスや英国は石炭火力の廃止に向けての方針を発表。ドイツも石炭への依存度を減らす方針だ。中国も、石炭火力の増設の抑制を示している。
日本も温室効果ガス排出量を30年度に13年度比26%、50年度に80%減らす目標を掲げる。ただ、新増設予定の石炭火力発電所が全て稼働すると、30年度目標の達成すら難しい。
環境省は相次ぐ石炭火力発電所の新設に難色を示し続ける。CO2排出への課税などを検討する「カーボンプライシング」の議論も始めた。電気事業連合会の勝野哲会長は「国際競争力への影響の観点などから慎重に議論するべき」とけん制する。
(文=栗下直也)
日刊工業新聞2017年9月25日