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“劇場型”物言う株主、日本企業に狙い定める

奇抜な提案・公開説明会
“劇場型”物言う株主、日本企業に狙い定める

AVIのジョー・バウエルンフロイントCEOは「日本市場の重要な転換点だ」と語る

 株主総会を目前に控え、手法が多様化する物言う株主(アクティビスト)に日本企業が悩まされている。近年のアクティビストは企業株を買い増すことなく、奇抜な株主提案や公開説明会などを開くことで味方を増やす“劇場型”論戦術で企業価値の向上を促す。主張には一定の合理性があるため、賛同に傾く機関投資家も増えた。株式市場全体が好調なことに加え、割安株に対する変化の声が高まっていることなどから、アクティビストは「日本(企業)は指摘すべき内容があふれている」と狙いを定めているようだ。

 「現物配当により大量の政策保有株式に注目を集め、その問題に意識を向ける」。英投資会社、アセット・バリュー・インベスターズ(AVI)は20日、都内で説明会を開きジョー・バウエルンフロイント最高経営責任者(CEO)がTBSホールディングス(HD)に向けて行う株主提案の理由を強調した。

指針が改訂


 AVIはTBSが保有する東京エレクトロン株を現物配当するよう株主提案で求めている。保有株の現物配当などを求めた内容は世界的にも珍しいという。説明会を複数回行ったほか公開討論も検討し、前例のない提案でもTBSや機関投資家などを説き伏せる考えだ。「説明会には投資家ら約70人が参加しており、客観的かつ独立した立場の判断が増えてきた」(ジョーCEO)と自信を示す。

 一見、パフォーマンスにも見える提案だが、3年ぶりに企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)が改訂されたため、機関投資家は耳を傾けざるを得ない。指針では今まで以上に持ち合い株の削減や取締役会に多様な人材の登用などを促している。経営者にとってこれまでは味方としてカウントできた投資家も、委任状争奪戦では“浮動票”と捉えたほうがよさそうだ。

段構えで否決を狙う


 現在、その浮動票の獲得を目指すのが香港のファンド、オアシスマネジメントカンパニーだ。アルパインの株主として、同社が計画するアルプス電気との経営統合に再考を求めている。21日のアルパインの定時株主総会に向けて特別配当などの増配と社外取締役選任を含む株主提案を実施。まずは議論と注目を呼ぶのが狙いだ。最終的には経営統合の是非を決める12月の臨時株主総会を本戦と捉え、オアシスのセス・フィッシャー最高投資責任者(CIO)は「臨時株主総会で3分の1以上の委任状の票を集め、否決させる」と二段構えで勝負する。

 そのほか東芝は複数のアクティビストからの要望に応える形で、7000億円規模の自社株買いをすると決めた。
また富士フイルムホールディングス(HD)は米ゼロックスの買収をめぐって反対する投資家カール・アイカーン氏と意見が対立している。
(文=渡辺光太)
日刊工業新聞2018年6月21日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
アイ・アールジャパン(東京都千代田区)によれば過去3年間で株主提案は増加傾向にあり、17年の提案数は前年比約3割増の212件。提案内容も多様化し、内訳で「その他」が7割を占める。アクティビストが日本市場に攻勢を強める中、アクティビスト対策は重要な経営課題になりつつあり、経営者には対話や立ち向かう姿勢が求められている。

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