パナソニックが家電で新規事業を生む“発射台”

社外からの視点で投資判断を早める仕組み

 パナソニックが大企業特有の“壁”と向き合っている。主力事業の家電は、モノづくりを取り巻く環境が変わる中、組織が大きいが故に新規事業を生み出しにくい課題を抱える。そこで「ゲームチェンジャーカタパルト(GCC)」と呼ぶ、新規事業創出の取り組みを進めている。壁を乗り越えるカギは迅速な判断。事業投資会社を使って評価機能をパナソニックの外に出し、投資判断を早める仕組みを取り入れている。

 パナソニックは家電を担当する社内カンパニー、アプライアンス社にGCCを置く。GCC創設は2016年。カタパルトとは「発射台」。GCCは技術革新を起こし、競争条件を変える事業の発射台だ。

 これまで2回、社内有志が参加するアイデアコンテストを実施。優秀なプロジェクトには、試作開発費やマーケティング費などを支援している。そのいくつかを、米国テキサス州で開かれるデジタル技術や音楽、映画といった分野の世界的展示会「サウス・バイ・サウスウエスト」に出展。これを機に、企業や大学と連携している。

 住宅のインテリアに溶け込んだ映像機器や、オフィスの冷蔵庫を使い弁当を無人販売するシステム、人が握ったような柔らかい食感を再現するおにぎりロボットなど、プロジェクトはどれもユニーク。4件程度のプロジェクトが、事業化を検討する段階に入った。

 最大の課題は、事業化に向けた投資戦略。パナソニックは製品を量産する技術は巧みだが、新規事業の成長を見極める知見は乏しい。GCCの深田昌則代表は、「社内だとどうしても二の足を踏んでしまう。社外の判断軸で(事業化を)加速できれば」と話す。

 そこで、米国サンフランシスコを拠点に起業直後のベンチャー企業へ投資する日系ベンチャーキャピタルと組み、事業投資会社「ビーエッジ」を3月に立ち上げた。ディー・エヌ・エー(DeNA)元会長の春田真社長の下、社外の視点から迅速な判断と投資の進展が期待されている。

 投資対象の事業に、パナソニックブランドは冠さない。事業が成長しビーエッジが投資を回収する際、パナソニックが買い戻すか、他社に売却するのかはあらかじめ決めない。

 社内で事業化を進める方法も、もちろん検討する。いずれにせよGCCの活動が、パナソニック本体の業績へ直ちに貢献するかは不透明だ。だが、この試行錯誤は、今後の同社の大きな糧となる。
(文=大阪・園尾雅之)

日刊工業新聞2018年6月12日

日刊工業新聞 記者

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06月17日
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「今まで学んだことをいったん忘れることが大切。若い世代から逆に教えてもらうことが多い」。深田代表はこう述べ、成功体験に捕らわれてはいけないと説く。GCC創設から約2年。カタパルトから新規事業が飛び出す日は遠くない。
(日刊工業新聞大阪支社・園尾雅之)

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