全固体電池研究ブーム!突破口を開いた研究者が語る最前線

連載「EVドミノ」バッテリー・インサイド①

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東京工業大学の菅野了次教授

組み合わせが重要


 -全固体電池は充電時間が数分間になるのは本当ですか。
 「イオンの流れがよくなることで、充電の速さもよくなる傾向に動く。ただ、例えば、数分のように、どこまで速くなるかは、電圧も関係する。良い固体電解質だけあれば解決するものではない。今後、電極や電解質の組み合わせなどがいろいろと検討されることで、実際にどこまで速くできるかわかってくる」

 -蓄電できる容量はどうでしょうか。
 「まず、電池パッケージがシンプルになって、不要なものがなくなり、同じスペース当たりの容量は増える。現在のリチウムイオン電池は、正極と負極、電解液、セパレーターが一つのセットで、円筒型やラミネート型などのセルをつくり、セルを並べて電池を作成している。全固体電池はセパレーターがいらない。また、セル単位で分けずに、正極と固体電解質、負極を繰り返し積み重ねて電池を作成できる。同じ容量であれば、電池はコンパクトになる」

 -リチウムイオン電池では使えない電池材料が使えることも、容量アップに貢献すると聞きます。
 「当研究室では実験で実証していないが、電極の選択肢が広がる期待はある。量産初期の全固体電池に新しい電極材料の採用は間に合わないかもしれないが、他の方法でも容量を増やせる可能性がある。電池が作動する時の電圧を少しでも高められれば、容量を増やせる。また、正極の電解質を厚くできれば、その厚さに伴って(電池内を行き来するリチウムイオンが増えて)容量が増える」
東京工業大学・菅野了次教授提供

上の図は、材料研究で明らかになった全固体セラミックス電池の可能性。自動車の航続距離も加速性能も大幅に引き上げられることを示唆した。

なぜハードルの高い車を目指すのか


 -一般的に自動車は新しい部品や材料の採用に慎重で、投資も巨額になります。車載電池よりも採用しやすい用途があるのではないですか。
 「これまで、新しい電池が既存の電池を置き換えたことはない。自動車のエンジン始動は今も鉛電池を使う。新しい電池が登場する時、必ずと言っていいほど同時に新しい用途が誕生してきた。リチウムイオン電池であれば、パソコンやスマートフォンだ。今の電池に課題を持つ自動車が、全固体電池にとって最も大きな目標となる。硫化物系の固体電解質の全固体電池は、最も車載電池に求められる安全性や容量をクリアできる可能性が高いが、要求に応えるには、第1弾が出て、第2弾以降へと続く必要がある。今は、第1弾を出すために、生産プロセス開発も含めて突き進んでいくこと重要だ」

 -今は実用化に向けてどんな段階ですか。
 「材料研究でわかってきた全固体電池が最大限特性を発揮した時の理想状態に対し、大型電池にした時の性能限界をどこまで近づけられるか。今後数年間の取り組みが非常に大事だ。リチウムイオン電池との差が小さければ、あえて全固体電池にする必要はなくなってしまう。全固体電池の性能の限界を引き上げるには、プロセス開発や材料開発、メカニズム解析といった各分野の努力に加え、分野間の〈会話〉が求められる。一つの発見を他の分野に素早く展開して、研究の方向性などをお互いが調節する。これがうまくいって初めて、全固体電池の研究をスピードアップできる。日本は研究者の層が厚い。新しい電池が出てくる時は、必ず日本から出てくる」
【菅野教授が発見した固体電解質】
2011年 リチウムとゲルマニウム、リン、硫黄で構成されるLGPS物質系で、イオン伝導率の高い固体電解質を発見。
2016年 LGPS物質系材料に塩素を加えることで電解液に比べ2倍のイオン伝導率の固体電解質と、広い電位窓を持つ固体電解質を発見。この電解質を使い、従来に比べ3倍の出力特性を持つ全固体電池を開発。
2017年 高価なゲルマニウムや、特異な組成となる塩素を使わずに、電解液に匹敵するイオン伝導率の固体電解質を発見。
EVドミノ始めました。

連載「EVドミノ」掲載記事


①全固体電池研究ブームをつくった研究者が語る最前線/東京工業大学・菅野了次教授
②電池を左右する1ナノメートルの世界を解明へ
③コバルト、リチウム・・・資源不足の事実と誤解
④EV航続距離を2倍に?!巨大プロジェクトの全貌

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EV航続距離を2倍に?!巨大プロジェクトの全貌 (2018年06月21日公開)
コバルト、リチウム・・・資源不足の事実と誤解 (2018年06月20日公開)
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COMMENT

梶原洵子
編集局第二産業部
記者

本当に夢の電池ができるのか。素朴な疑問に、菅野教授はとても丁寧に答えてくれました。このインタビューは5月下旬に行い、その後、NEDOの全固体電池プロジェクトの発表会が行われました。菅野教授の話していた〈会話〉の重要性とNEDOのプロジェクトを両方聞くと、なるほどと思えます。プロジェクトの詳しい内容を4回目の連載で取り上げます。

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