独EVベンチャーがDHLに選ばれた理由

大事なのは要素技術ではない

少ない台数でオーダーメード


 国際輸送大手の独ドイツポストDHLグループは、二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向け、自社で使う電気自動車(EV)の商用車を自前で生産している。生産子会社は、独NRW州の工業技術をリードするアーヘン工科大学発のストリート・スクーターだ。同州の支援を受けて事業を始め、DHL傘下に入った。今後、日本市場を含めて配送業者などへの外販を拡大する。ファビアン・シュミット最高技術責任者に戦略を聞いた。

-ストリート・スクーターの強みは。
「1車種あたり1万~2万台の生産規模で、個別企業のニーズに合う車をゼロから生産できる。大規模生産の必要な自動車大手との違いだ。当社はEVの要素技術ではなく、車を効率的に開発する手法をベースに起業した。開発期間を短縮することで、少ない生産台数でも、顧客専用に車をデザインできる」

-どのくらいの期間で開発できますか。
「12~14カ月だ。現行車両は、開発初期に、試作車を数百人規模の配達作業者に扱ってもらい、意見を聞いて作り込んだ。実際に触れると、利用者が『どんな機能があるといいか』を想像しやすい。利用者とのコミュニケーションや意見の反映などが、期間短縮のポイントとなっている」

-基幹部品に違いはありますか。
「モーターやインバーターは外部調達している。電池は(最小単位の)セルを購入し、自社でシステムを組み立てる。また、大型車は米フォード・モーターの車両をベース車にした。部品ではなく、車両全体の使い勝手や長寿命、修理コストの低減を重視している」

ストリート・スクーターのファビアン・シュミットCTO

-具体的には。
「例えば、小型車の車体は着色プラスチックを採用した。塗装の必要がなく、傷がついても同じ色。小さな傷はそのままで走れる。プラスチック用金型は金属部品用よりも安いという利点もある」

-現在、何台程度が走行していますか。
「7000台弱のDHL向け車両がドイツで走行している。積載容積4~8立方メートルと、同20立方メートルの車両の2種類がある。DHLは全ての配送車をEVとする目標を持つ。DHLは年3000~8000台を更新するため、当社は一定の生産をしながら新規客を獲得して成長できる」

-生産計画は。
「2017年の実績は7000台、18年は1万5000台、19年は3万台を計画する。外販を計画しており、日本企業へも販売したい。3台の右ハンドルの試作車を日本に持ち込み、市場調査を始めた。日本は海外と比べ冷蔵や冷凍輸送が活発で、体の大きさも違う。DHLのように、ビジネスの基盤になる企業を探したい」

(2018年6月6日 日刊工業新聞)

梶原 洵子

梶原 洵子
06月06日
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EV市場は新規参入しやすいと言われていますが、ユーザーが生産に踏み込むことに驚きました。すでに日本企業からのコンタクトもあるようです。

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