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中計2年目の三井物産、成長分野をどう見ているか?

安永竜夫社長インタビュー
 中期経営計画の2年目に入った三井物産は、強みとする資源・エネルギー分野の収益基盤固めに加え、非資源分野の収益向上に取り組んでいる。重点施策の一つであるイノベーション機能の強化では、デジタル技術を活用した全社的な取り組みも加速している。安永竜夫社長に成長分野の取り組み状況などを聞いた。

 ―人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)といったデジタルの活用についてどう考えますか。
 「悩みや課題があってのAIなので、現場が抱えている課題を把握し、人間の目でどういう風に(AIを)落とし込めるのかという発想が必要。『ワトソン君、どうしたらいいの?』ではダメだ。ややもするとAIやIoTにもっと投資をしなければならない、となりがちだが、ツールとして利益をあげることを考えるべきだ」

 ―大手商社では部門横断的な取り組みが課題という声が聞かれます。
 「それぞれがもっている力を束ねていかないと事業分野を多数持っている意味がない。もともとは海洋開発から始まってエネルギー事業として組み替えた歴史があるように、部門横断が悩みだと感じたことはない。非資源分野の機械やICT(情報通信技術)が、資源開発やエネルギー事業で省エネにつながっているということもある」

 ―金属資源分野の市況変動についてどう見ますか。
  「米国を震源とする鉄鋼製品に対する追加関税など、貿易戦争と言われるようなことも起きているなかで、中長期的に鉄鉱石には競争力があるので利益があげられると見ている。原油・ガスについては2019年3月期決算の前提条件として、原油価格をかなり保守的に見積もっている」

 ―LNG(液化天然ガス)については。
 「LNGはまだ、我々の大半は原油リンクで、原油価格が上がっていけばそれにつれて価格も上がっていくことになる。ただ、米国のLNGは原油には直接リンクしていなくて、ヘンリーハブ(米ルイジアナ州の天然ガス集積地)価格に連動するガスが入ってくると、(原油価格との連動性が)薄まっていく」

 ―コーポレート人材を営業現場に送りこんでいる狙いは。
 「コーポレートはどうしても受け身になりがち。営業と一緒にアイデアを出すなど、より営業現場に寄り添うことができる。現場とコーポレートの間で案件について、何度も行ったり来たりするといった無駄を省くことにもつながる」
日刊工業新聞2018年6月5日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
もともと資源分野に強みをもってきた三井物産は、金属資源・エネルギーへの継続的な投資とともに、機械・インフラや化学品も成長分野に位置づける。資源・エネルギー開発といった川上に偏ってきたという反省も踏まえ、既存事業にICTやデジタル技術を積極的に取り込み事業変革を進めている。

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