マツダの命運を握る「米国」

関税を注視しながらも、販売の立て直しを急ぐ

 トランプ政権が安全保障を理由に自動車や自動車部品の関税引き上げを検討すると発表し、日系自動車メーカーが神経をとがらせている。6月末に社長交代し新時代へ踏み出すマツダ。小飼雅道社長は関税引き上げ検討について「状況を注視していく。基本的に世界の関税や規制にマッチさせて生産、販売しており、今後もこの考え方に従って適切に対応する」と話す。同社は2017年度に米国で約30万台を販売。うち日本からの輸入車両は約23万台と約76%を占め、関税が25%になれば影響は大きい。

 4月下旬に公表した中長期の経営方針では、米国市場を重視する方向性を改めて打ち出したばかり。丸本明次期社長も「最重点の課題は米国市場。この市場を立て直すことが最重要」とみる。21年にはトヨタ自動車と共同で建設する米アラバマ州の新工場を稼働させる。

 21年にはマツダだけで年間15万台の生産能力を持つ、トヨタと共同出資するアラバマ州の工場が稼働することもあり、安定的な販売力が急務だ。

 米国の販売台数はリーマン・ショック後10年3月期の21万台を底に、16年3月期は30万6000台まで回復。18年3月期も30万4000台を販売した。だが、4ドアのセダン系車種を中心にした販売競争が激しく、インセンティブ(販売奨励金)が高騰する中、マツダはインセンティブを抑えたこともあって売り負けてきた。

 19年3月期から米国の販売店網整備のため、年間100億円を4年間にわたって投資する。黒が基調の「次世代ブランド店舗」は重点地域を中心に300店整備する。

 焦点は、なんといっても21年に稼働するアラバマ州の新工場と、そこで作る新型SUVの成否だろう。年間15万台の車種と言えば、ほぼ「アテンザ」と同等。マツダの基幹車種の一角を占める。失敗は許されない。

 北米自由貿易協定(NAFTA)に加盟するメキシコから米国への輸出も不透明。年間生産能力25万台を抱える既存のメキシコ工場は、「デミオ」と「アクセラ」を生産する。北米2工場がどう連携しながら、最適な生産体制を取っていくのかも重要だ。

 マツダのお膝元である広島のサプライヤーにとっては、15万台と25万台という2カ国の工場に部品を別々に供給する必要がある。採算や人材をどう確保するか、悩ましいところだ。
                   

日刊工業新聞2018年5月25日 の記事を加筆・修正

清水 信彦

清水 信彦
05月27日
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 丸本次期社長にとって北米と並ぶ最重要課題は、採算性向上の問題だ。18年3月期の売上高営業利益率は4・2%と、国内の乗用車7社中、最下位にとどまる。これがさらに19年3月期は3・0%に低下する。 為替が円高に振れることや、米販売店網への投資が増えることが主な要因だ。このままなら、19年3月期までの中期経営計画「構造改革ステージ2」に掲げた営業利益率の目標値、5%からほど遠い結果で終わる。
 中長期の経営方針から見ても、しばらくは投資が膨らむ時代が続きそう。設備投資は22年3月期までの4年間、年間1000億円弱という通常のレベルに加え、さらに2500億円を上乗せする。内訳は米国新工場が1000億円、エンジンと変速機の能力増強が300億―400億円、残り1000億円が電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)など、新技術への対応投資になる。研究開発費も次世代技術の開発本格化に伴い、16年3月期から毎年最高額を更新中。これも次世代エンジンや電動化への対応で、高止まりを見込む。
 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一シニアアナリストは、マツダの一連の取り組みについて、「米国市場の販売テコ入れや内燃機関の強化、デザイン性向上、デジタルツールを使った開発など施策に違和感は少なく、方向性は正しいように思う」と評価する。

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