うつ・認知症の治療薬開発、宇宙からのヒント

「遺伝子欠損マウス」が帰還

 5月6日、ISSで長期滞在中の金井宣茂さんが宇宙で育てた12匹のマウスが地球に帰ってきた。特定の遺伝子を失わせた「遺伝子欠損マウス」であり、こうしたマウスの宇宙での影響をくわしく調べれば、骨粗しょう症のほか、うつや認知症といった中枢神経に関わる疾患解明や治療薬の開発につながるかもしれない。

 2016年にJAXA宇宙飛行士の大西卓哉さんの長期滞在中に始まった宇宙でのマウス飼育実験は今回で3回目となる。具体的には、生体のストレス防御に関わる遺伝子「Nrf2」をなくしたマウスと、その比較となる野生型マウスの計12匹を「きぼう」で1カ月飼育。その後ケージに入れ、補給船で地球に帰した。

 遺伝子の欠損マウスを宇宙に運ぶ試みは、米航空宇宙局(NASA)が以前から実施しているものの、宇宙で飼育した欠損マウスを生きたまま地球に帰還させるのは今回が初めてだ。

 使用したのは、製薬企業や大学などが一般的に使っている欠損マウスであり、汎用性が高い。JAXA側の研究責任者である芝大技術領域主幹は、「地上で行う遺伝子改変マウスの実験と同じことができる宇宙環境のプラットフォームを構築できた」と強調する。
ISSで飼育中の遺伝子欠損マウス(JAXA提供)

日刊工業新聞2018年5月24日「深層断面」から抜粋
【全文は日刊工業新聞電子版から】

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
05月24日
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研究代表者である東北大学医学部の山本雅之教授は、「さらに多くの種類の病態モデルマウスを宇宙ストレス存在下で飼育することで、人類の宇宙の長期滞在への道を開く。地上での老化関連疾患の克服に向けた取り組みも活性化するのではないか」と期待する。
(日刊工業新聞科学技術部・冨井哲雄)

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