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進化し続けるステアリング、その影に部品の技術革新あり

NTNと日本精工が相次ぎハンドル部品
進化し続けるステアリング、その影に部品の技術革新あり

NTNのアクチュエーター内蔵の軸受「sHUB」

 ベアリングメーカー業界は自動車の進化を支えている。大手のNTNと日本精工から相次ぎ、革新的な技術が登場しようとしている。

 NTNは自動車のかじ取り装置(ステアリング)を補助し、走行の無駄を抑えて燃費を改善する軸受を開発した。自動運転車の回避動作にも適用が期待できる。車速やハンドル角度から走行状態を計算し、車輪を素早く最適な角度に動かす。燃費を改善したり、車線変更時にハンドルを回す角度を減らしたりでき、車の操作性も高まる。5月下旬から車メーカーに提案を始める。同様の仕組みは例がなく、世界初という。

 NTNが開発した軸受は、動作を細かく制御できるアクチュエーターを内蔵したハブベアリング「sHUB」。車線を変更する場合、ハンドル操作に連動する車両の応答速度を従来の約半分の0・1秒に短縮できる。また、ハンドルを回す角度は最大4割減らせる。

 ステアリングは機械やタイヤなどの性質上、ハンドルを回してから車両が動くまで時間差がある。sHUBはステアリングと別の独立機構。走行状態を考慮しながら、素早く車輪の角度を補正する。左右のタイヤを別々の角度に動かすこともできる。車輪を動かせる角度はプラスマイナス3・5度。

 sHUBは車輪の回転を支える軸受とアクチュエーターを、ナックルと呼ぶ取り付け部品で一体化する。アクチュエーターが前後に動き、軸受と軸受に取り付けた車輪の角度を操作する。車速やハンドル角度を基に直進やコーナーを曲がるといった走行状態を判断し、車輪を最適な角度に制御する方法を神奈川工科大学と開発した。

 既存のステアリングを変更せず、前輪のサスペンション(懸架装置)に取り付けられる。現状では後輪駆動車(FR)の前輪(非駆動輪)にしか取り付けられないが今後、前輪駆動車(FF)の前輪に使えるよう改良する。

 一方、日本精工は自動車の衝突安全性の向上に貢献するハンドル軸部品「ステアリングコラム」を開発した。独自機構の採用で、衝突時に運転手がハンドルを押すことで伝わる荷重のバラつきを同社従来製品と比べ25%低減し、安定した衝撃吸収性能を実現した。部品点数の減少で同15%軽量化し、コストも同約10%削減した。既に6車種で受注。2021年に同製品で80億円の売上高を見込み、一層の拡販を目指す。

 ステアリングコラムはハンドルと車両間の軸部分の部品で、衝突時の荷重を軸の収縮で吸収する。開発した「樹脂ピン式内部収縮ステアリングコラム=写真」は、衝撃荷重を受けて軸を収縮させるための離脱構造をコラム内で完結。離脱時に受ける荷重を一定に保つことで安定した衝撃吸収動作を実現した。

 従来は車両とコラムの取り付け部位に離脱構造を設けていたため、両部品の寸法のバラつきによる影響などで離脱荷重を一定の範囲内に抑えることが難しかった。

 独自機構の採用で振動剛性も同11%向上。ハンドル操作の安定性を高め、快適な乗り心地にも貢献する。

 既に日系完成車メーカーがグローバル展開する車種での採用が決まっており、中国、米国、日本、タイで順次生産して供給する。
日本製工のハンドル軸部品
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ベアリングメーカーのしぶい仕事ぶりが光ってます。

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