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もう経験や勘に依存しない、ICTを活用して漁場を特定せよ

農林水産省・水産庁が沿岸漁業で実証
 農林水産省・水産庁は、情報通信技術(ICT)を活用して沿岸漁業をスマート化するパイロット(実験)事業を2018年度に開始する。出漁した海域の情報をサーバーに送ると、沿岸海流モデルから周辺海域の漁場を分析・予測するシステム。漁業者はこれまでのように経験や勘に依存せず、漁場の「見える化」が可能になるため、漁業の効率化支援や若手漁業者の育成にも役立つとしている。

 水産庁が進める「スマート沿岸漁業推進事業」の一環。九州大学が中心となり、福岡県や計測機器を開発するメーカーなどが参加して九州北部海域で行う。

 漁船が小型計測器で出漁海域の水温、塩分、水深などのほか、小型カメラの画像で波高、波浪といった海象データを合わせてサーバーに送信する。これらのデータをスーパーコンピューターによる沿岸海流モデルで分析し、漁場の形成エリアを予測。予測結果は漁業者の端末に配信する。

 水産庁は18年度にパイロット事業を通じて、システムの使い勝手について検証する。課題の抽出や改良点などを踏まえて、19年度に完成度を高めて終了する計画だ。

 沿岸域の海況は局所的に大きく変動する一方で、観測ブイの設置数は少ないのがネック。沿岸漁業をサポートする情報量は不十分な状況という。このためICTによる支援技術を開発・普及を目指す。これまでにパイロット事業に必要な基礎データ収集、計測機器の開発、予測モデルの開発などを進めてきた。
日刊工業新聞2018年5月18日
葭本隆太
葭本隆太 Yoshimoto Ryuta デジタルメディア局DX編集部 ニュースイッチ編集長
水産庁の調査によると、漁業就業者数は2008年の約22万人から17年は約15万人まで減少しています。ICTによる生産性向上がこうした部分を補えるようになればと期待します。

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