太陽光発電メーカーがチョウザメの養殖を始めたワケ

長州産業、製造業の技術を活用「長州キャビア」実現へ

 太陽光発電システムなどを手がける長州産業(山口県山陽小野田市、岡本晋社長)が、チョウザメの養殖を本格的に始めた。すでに宮崎県や岐阜県などでも行われているが、同社は2016年から稚魚養殖を開始。4月から山口県美祢市の美祢市養鱒(そん)場のいけすを借り受け成魚養殖と近い将来の「長州キャビア」実現に向けて動き出した。製造業が挑む新規事業に勝算はあるのか。岡本社長に展望を聞いた。

 ―全くの異業種への参入です。
 「創業者で実父の岡本要会長(故人)が、晩年に新規事業として始めた。製造業がどうして養殖を?と違和感があるだろうが、会長は起業家としての遺伝子を残したかったのだろう。私自身は経験もノウハウもなく不安だったが、賛同してくれる従業員も多く、父の思いを引き継いだ」

 ―チョウザメといえば、世界三大珍味の一つであるキャビアが有名ですが、商品化には時間がかかるといわれます。
 「成魚まで育つのに7年、採卵までに8―9年かかる。16年4月から、県内の2事業所に設置したいけすで稚魚を試験養殖してきたが、日本名水百選に選ばれている『別府弁天池』の湧水を利用した養鱒場のいけすを、美祢市から賃借できたので、本格的に成魚を育てる。卵が有名だが、実は魚肉も低脂肪ながら美味。アジやサバと比べ、2倍近くの必須アミノ酸を含む。和洋中どんな料理にも加工できるので、いろいろな食べ方を提案していく」

 ―具体的な事業化スケジュールは。
 「4月に330匹の成魚を池入れした。数年後に700匹までに増やす。成魚は購入もできるので、加工肉を近隣の飲食店や宿泊施設に販売する。生産や加工はできるだけ地元に委託することで、山口県の6次産業化にも貢献したい。3年後には数億円の売上高を見込んでいる」

 ―真空や洗浄などの製造技術を応用することは可能でしょうか。
 「養殖は先進国の得意技術。生育や管理手法には高い技術が求められる。ナノバブルを使うことで成長が促進されることが分かっているし、IoT(モノのインターネット)の手法も効果的だろう。培った技術は積極的に活用していく」
長州産業社長・岡本晋氏

日刊工業新聞2018年5月15日

日刊工業新聞 記者

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05月15日
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魚は日本人の食卓に欠かせない食材の一つ。だが近年は乱獲が進み、マグロやウナギ、イワシといったなじみ深い食材の漁獲高が激減している。チョウザメはまだ一般的ではないが白身の肉は淡泊で、生でも、焼いても揚げてもおいしくいただける新食材として期待できる。飼育は難しく時間もかかるが、採卵が始まれば「長州キャビア」という“金の卵”が大きな利益を産む。それまでの数年間の下地づくりが成功のカギになりそうだ。
(日刊工業新聞社北九州支局長・大神浩二)

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