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「会社としての実力がついていない」 スバル、減益からの出直し

ブランド力を高め付加価値でコストを吸収する
「会社としての実力がついていない」 スバル、減益からの出直し

6月に会長兼CEOになる吉永社長の花道はなかった

 SUBARU(スバル)の2018年3月期の世界販売台数は吉永泰之社長が就任した12年3月期と比べ約7割増の106万6900台、主戦場の米国は約2・4倍増の67万900台と大幅に伸びた。吉永社長が率いた7年間でスバルは成長を遂げた。一方、完成車検査問題を引き起こした企業風土の改革は道半ば。電動化など次世代技術への対応など将来の課題は多い。成長を維持できるか。中村知美次期社長ら新経営陣の手腕が問われる。

 スバルの18年3月期の連結決算は増収減益だった。新型車の販売が好調に推移したが、販売管理費の増加や無資格者による完成検査問題の対応費用などが利益を押し下げた。19年3月期は北米向け新型車の投入などで世界販売が前年比3・1%増の110万400台と過去最高を計画する。ただ販管費の増加や会計方針の変更などで減収減益を見込む。

 スバルは11年6月の吉永社長就任後、北米を中心に販売を伸ばし17年3月期には初めて世界販売が100万台を突破した。経営数値だけみれば誇れる出来栄えだ。

 だが先週の会見で吉永社長は「ここ数年の成長に対し、会社としての実力がついていっていないと強く感じた」と厳しい表情を浮かべた。ここ数年、品質に対するクレームが増加。完成検査問題も「つたない仕事の進め方が引き起こした」(吉永社長)。

 事業環境も厳しさを増す。ドル箱の米国市場では車の需要がピークアウトし競争が激化。電気自動車(EV)や自動運転など技術革新への対応も急務で、スバルにとって成長どころか現状維持も難しくなる。

 「規模の力でコストを吸収するのではなく、ブランド力を高め付加価値でコストを吸収する」と吉永社長はスバルの将来像を描く。実力を付けブランド力を高めていけるか、重要な局面を迎える。

 6月下旬の株主総会後は吉永社長が会長兼最高経営責任者(CEO)として企業風土の抜本的な改革を進め、中村次期社長が7月に発表する中期経営計画を遂行する。

中国販売、4月1000台割れ


 スバルにとって中国事業は課題の一つ。18年3月期の販売台数は2万6900台と3年前の15年3月期の5万3800台から半減した。19年3月期は前期比約1割増を目指すが、4月実績は前年同月比63・6%減の882台と1000台の大台を下回った。

 スバルの世界販売に占める中国の比率は2・5%とわずか。だが小規模メーカーのスバルが効率良く全社販売を伸ばすには巨大な中国市場でのシェア拡大が欠かせない。吉永社長も社長就任時、中国を成長市場に掲げた。

 同社は中国販売車両を輸入に頼る。関税で販売価格が上がることが苦戦の理由。習近平国家主席が25%の関税を年内に引き下げる方針を示しており、スバルに追い風となる。

 それでも「現地生産していないハンデは残る」(スバル幹部)。「四輪駆動などスバル車の個性を明確に訴求するよう顧客開拓を見直す」(吉永社長)ことで販売をテコ入れしていく。
              

             

(文=下氏香菜子、後藤信之)
日刊工業新聞2018年5月14日
中西孝樹
中西孝樹 Nakanishi Takaki ナカニシ自動車産業リサーチ 代表
会長へステップダウンする吉永CEOの最後の決算説明会であった。大幅な減益予想で社長職を締めくくった形だが、問題を直視し背伸びをしない姿勢が印象的であった。大幅減益であるが、それでもまだ3000億円の営業利益を生み出す計画はある意味立派。社員はこの数字に恥じない行動と意識改革を実施すべきだ。素晴らしい功績を残したが、吉永社長に花道は無かった。1年に期限をくぎり、大所高所から会社の意識改革を断行するようだ。

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