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45歳の知事が挑む、明治改元150年目の山口県「3つの維新」

 山口県の村岡嗣政知事は企業誘致や産業振興に取り組み、1期目の4年間で100件超の企業誘致と約3000人の雇用を実現した。全国で2番目に若い45歳の知事で、その行動力を成果に結びつけた。2月に再選を果たし、産業・大交流・生活の「3つの維新」を掲げ、地方創生や人口減少といった課題克服に挑んでいる。2018年は明治改元150年の節目の年。村岡知事に意気込みを聞いた。

 ―企業誘致で大きな成果を生みました。
 「医療や環境・エネルギー分野で約40件の新製品を事業化した。農林水産物の輸出国・地域は3倍に、輸出商品数も10倍に増えた。観光客数は過去最高の3000万人を超え、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の拠点施設開設にもこぎつけた」

 ―少子高齢化の進展で地場企業の人材不足が深刻です。
 「人口減少の克服は一朝一夕にできるものではないが、若者の県内就職・定着の取り組みを粘り強く進める。イノベーションの推進や企業の生産性向上、産業人材の確保・育成が大事だ。やまぐち産業振興財団に『生産性向上・人材創造拠点』を設置し、生産性向上と技術革新を担う専門人材の育成・強化を図る」

 ―18年度予算では新産業分野への配分が目立ちます。
 「バイオ関連産業や再生可能エネルギー活用型水素ステーションの導入促進に向けた支援制度を創設するなど、本県の特色を生かした新たなイノベーション創出を進める。また今後成長が期待される航空機や宇宙機器産業への参入を促すなど、中小企業の成長支援にも取り組む」

 ―県産品を首都圏に売り込む「地域商社やまぐち」が山口フィナンシャルグループなどの民間出資で設立されました。
 「山口県人はとにかくPR下手だ。良い素材があってもそれを生かしきれていない。地域商社は県と一体となり、魅力的な商品の開発によるブランド化やプロモーション活動を通じて首都圏で販売を強化する。販路拡大のほかに生産者の所得向上や雇用の場確保にもつながる」

 ―明治改元150年の今年は多くの事業が計画されています。
 「本県は幕末・明治期の歴史的舞台となったこともあり、県内各地に貴重な歴史・文化遺産が残されている。9月には『山口ゆめ花博』が控えており、産業、文化の両面で魅力をPRしたい」

【記者の目/魅力ある都市づくりも必要に】
 明治維新を先導した長州藩(現山口県)は人材を輩出した。150年を経た今も大都市への人材流出は止まらず、これが県の成長を阻害する一因になっている。待ったをかけようと村岡知事は誘致や新産業創出に奔走している。人材の定着には雇用の場確保だけでなく、魅力ある都市づくりも欠かせない。村岡県政が新たな維新を起こせるのか注目したい。
(文=北九州支局長・大神浩二)
日刊工業新聞2018年5月11日
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
東に広島、西に福岡という、人材流出の課題は想像に難くない立地。風光明媚な町並みなど観光のイメージも強い山口ですが、周防灘沿岸の工場夜景に代表される、「太平洋ベルト」を構成する立派な工業県です。化学、鉄、素材という装置産業を担ってきた歴史から周辺産業を含めて工業の地力は強いはず。企業誘致も好調のようですし、新たな産業創出による飛躍が楽しみです。

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