星野リゾート、山口県の温泉街再生へ
長門湯本「国内でもトップ10に入る人気温泉街にする」(星野社長)
星野リゾートは13日、進出を計画している山口県の長門湯本温泉について、長門市からの要請を受け、街づくり全体のマスタープランを策定し、6月下旬にも提出すると発表した。
長門湯本温泉は14年1月に老舗旅館の白木屋グランドホテルが経営破たんし、観光客が減少。長門市は同ホテルの跡地に星野リゾートを誘致し、温泉旅館ブランド「界」の開業を計画している。の星野佳路社長は「街全体を魅力的にする計画を作り、国内でもトップ10に入る人気温泉街にする」と述べ、長門湯本温泉の再生に意欲をみせた。
安倍晋三首相の地元、山口県長門市の長門湯本温泉で、全国の温泉街初というスマートコミュニティー(次世代社会インフラ)構想が進んでいる。バイオマスボイラとヒートポンプを組み合わせた熱供給システムを構築し、山あいの旅館11軒が利用する源泉を加温することで年間光熱費を20%削減する。生き残りをかけて“エネルギーの地産地消”に取り組む成果が注目される。
温泉街は全国に点在するが、箱根(神奈川県)や由布院(大分県)など一部の有名地を除けば客数減少や宿泊単価下落に悩む。長門湯本の場合は、これに加えて源泉が37度Cと低いため、いったん61度Cまで加温することが義務づけられている。大手旅館で重油を年24万リットル、2400万円程度の光熱費の負担になるという。2月には創業150年の老舗旅館が倒産した。
山口に隣接した九州には、由布院のほか黒川(熊本県)、別府(大分県)など個性豊かな大小の温泉地がある。宿泊施設の数も数軒から数百軒までさまざまだ。人気の温泉地には来訪客が押し寄せ、客単価は高い。一方、知名度で劣る地域は宿泊単価を下げなければ来訪客を確保できない。原油高騰による光熱費の値上がりが重くのしかかる長門湯本は、それだけでも不利な状況にある。
そこで環境コンサルタントのEECL(イークル=山口県下関市)が、新たな事業を進めている。年内に源泉加温のための熱供給システムを設置し、数軒の旅館で試用運転を始める。2―3年内には11軒すべてに導入を図る。最終的には太陽光や木質バイオマスなど再生可能エネルギーのコージェネレーション(熱電併給)発電で地区全体の需要をまかなう計画だ。
2013年度経済産業省の「スマートコミュニティー構想普及支援事業」に選ばれており、この事業の中で環境と観光の両立の可能性を探る。
EECLはさらに、自営の電力ネットワークを構築して商用電力を一括受電する構想を持っている。旅館にはそれぞれエネルギー管理システム(BEMS)を導入し、地域節電所による需給情報の一元管理やデマンドレスポンス(需要応答)まで視野に入れる。実証の成否はエネルギーの地産地消を占う試金石になる。
ライフスタイルの変化に伴い、個人旅行のあり方も様変わりした。特に企業の慰安旅行や接待に依存してきた温泉地は、集客のための新たな投資やイメージ戦略が不可欠だ。しかし、まだ多くの温泉地は時流に乗り切れない。長門湯本が挑むエネルギーの地産地消という先進事例を県内外にPRすれば、来訪客増も得られる一石二鳥の策となる。
長門湯本温泉は14年1月に老舗旅館の白木屋グランドホテルが経営破たんし、観光客が減少。長門市は同ホテルの跡地に星野リゾートを誘致し、温泉旅館ブランド「界」の開業を計画している。の星野佳路社長は「街全体を魅力的にする計画を作り、国内でもトップ10に入る人気温泉街にする」と述べ、長門湯本温泉の再生に意欲をみせた。
安倍首相の地元で、温泉初のスマートコミュニティー構想
日刊工業新聞2014年7月8日
安倍晋三首相の地元、山口県長門市の長門湯本温泉で、全国の温泉街初というスマートコミュニティー(次世代社会インフラ)構想が進んでいる。バイオマスボイラとヒートポンプを組み合わせた熱供給システムを構築し、山あいの旅館11軒が利用する源泉を加温することで年間光熱費を20%削減する。生き残りをかけて“エネルギーの地産地消”に取り組む成果が注目される。
温泉街は全国に点在するが、箱根(神奈川県)や由布院(大分県)など一部の有名地を除けば客数減少や宿泊単価下落に悩む。長門湯本の場合は、これに加えて源泉が37度Cと低いため、いったん61度Cまで加温することが義務づけられている。大手旅館で重油を年24万リットル、2400万円程度の光熱費の負担になるという。2月には創業150年の老舗旅館が倒産した。
山口に隣接した九州には、由布院のほか黒川(熊本県)、別府(大分県)など個性豊かな大小の温泉地がある。宿泊施設の数も数軒から数百軒までさまざまだ。人気の温泉地には来訪客が押し寄せ、客単価は高い。一方、知名度で劣る地域は宿泊単価を下げなければ来訪客を確保できない。原油高騰による光熱費の値上がりが重くのしかかる長門湯本は、それだけでも不利な状況にある。
そこで環境コンサルタントのEECL(イークル=山口県下関市)が、新たな事業を進めている。年内に源泉加温のための熱供給システムを設置し、数軒の旅館で試用運転を始める。2―3年内には11軒すべてに導入を図る。最終的には太陽光や木質バイオマスなど再生可能エネルギーのコージェネレーション(熱電併給)発電で地区全体の需要をまかなう計画だ。
2013年度経済産業省の「スマートコミュニティー構想普及支援事業」に選ばれており、この事業の中で環境と観光の両立の可能性を探る。
EECLはさらに、自営の電力ネットワークを構築して商用電力を一括受電する構想を持っている。旅館にはそれぞれエネルギー管理システム(BEMS)を導入し、地域節電所による需給情報の一元管理やデマンドレスポンス(需要応答)まで視野に入れる。実証の成否はエネルギーの地産地消を占う試金石になる。
ライフスタイルの変化に伴い、個人旅行のあり方も様変わりした。特に企業の慰安旅行や接待に依存してきた温泉地は、集客のための新たな投資やイメージ戦略が不可欠だ。しかし、まだ多くの温泉地は時流に乗り切れない。長門湯本が挑むエネルギーの地産地消という先進事例を県内外にPRすれば、来訪客増も得られる一石二鳥の策となる。
日刊工業新聞2016年4月14日生活面の記事から抜粋