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電子部品大手6社が公表した今期の業績見通し、本当に“脱スマホ”は可能なの?

電子部品大手6社が公表した今期の業績見通し、本当に“脱スマホ”は可能なの?

スティーブ・ジョブズシアターで行われたクックCEOのキーノート(アップル公式動画サイトより)

 電子部品6社の2019年3月期連結業績見通しが8日までに出そろい、5社が営業増益となりそうだ。スマートフォン向け事業の伸びが鈍化する一方、各社は自動車や産業機器向け事業を育成することで中長期的な成長を目指す。それに伴い今期は、生産面や開発面の投資を先駆的に実施する企業が目立つ。顕在化しているスマホ向け事業の減速を補うため試行錯誤が続く。

 ミネベアミツミが8日発表した18年3月期連結決算はゲーム向け部品が伸長したほか、ベアリングが好調で、増収・営業増益だった。

 19年3月期も売上高、営業利益は過去最高を更新する。有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)を搭載したスマホの登場により、需要後退が懸念されていた液晶向けバックライトだが、「19年3月期も引き続き好調だ」(貝沼由久会長兼社長)と強調した。

 同じくゲーム向け部品が好調だったアルプス電気は19年3月期の営業利益が減益となる見通し。気賀洋一郎アルプス電気取締役は「ソフトウエアにもよるが、ゲーム市場の伸びは19年3月期も好調だろう」とする一方、「スマホ市場については相当厳しく見ている」と警戒を強める。加えて今期は投資を絞り、減価償却費が増加する。

 TDKはスマホ向け二次電池を含む「エナジー応用製品」が好調だった。19年3月期は「2輪車など新分野に向け投資を行う“踊り場”になる」(石黒成直社長)と説明する。

 同時に赤字が続くセンサーや磁石事業の黒字化に向けて生産投資や研究開発投資を進める。狙う市場は車や産機向けのため、本格的に利益貢献してくるのは20年3月期を見込む。

 村田製作所は19年3月期の売上高が前期比14・8%増と、車載向けが貢献する見通し。「車の電装化の進展により、コンデンサーを中心に需要が増えている」(村田恒夫会長兼社長)ことを受け、引き続き増産投資を図る。

 京セラでも車載向けの引き合いが伸びることから、19年3月期は「部品事業全体では堅調に推移する」(谷本秀夫社長)と予想する。スマホ向け製品の価格については「今年はかなり下がる」(同)見通しだが、価格が安定している車載向けが補う。

 事業構造の転換が奏功しているのは日本電産だ。19年3月期の売上高は前期比5・8%増を予想。けん引役は小型モーターの分野から車載、ロボット、省エネ家電といった成長分野にシフトした。成長分野に向けて「今から先行的な投資をきちっとやる」(永守重信会長兼社長)。車載向け製品については電気自動車(EV)に対応できるメーカーが少ないことから「M&A(合併・買収)よりもオーガニックな成長を目指す」(同)としている。
                    
日刊工業新聞2018年5月9日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
各社はスマホ向け事業を中心とするビジネスモデルから、その他の事業比率を増やすなど“脱スマホ依存”を進めてきた。スマホのみに頼らない姿へ変わることができるか、19年3月期は事業転換の最終局面に入る。

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