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公的機関の交渉力でアジアのインフラ需要を取り込め!

国交省が企業の海外展開後押し
公的機関の交渉力でアジアのインフラ需要を取り込め!

独法の海外インフラ業務を明確化する(海外インフライメージ=ベトナムでの鉄道建設)

 国土交通省はインフラシステムの海外展開に向け、インフラに関わる独立行政法人や公的企業を活用し、企業の海外展開を後押しする。高速鉄道や空港など8分野15機関を対象に、海外事業に関する業務を明記した法律案を今国会に提出、業務を法的に担保する。独法などが持つインフラ整備の専門的な技術やノウハウ、公的機関としての中立性や交渉力を生かす。アジアを中心に拡大が見込まれるインフラ需要を取り込む。

官民一体


 国交省は3月末に策定した「インフラシステム海外展開行動計画2018」で、五つの戦略をまとめた。その一つが、独法などの知見の活用による官民一体の海外展開だ。インフラの開発・整備は各国政府の意向が強く反映される。そのため、案件形成など交渉の川上段階では、民間企業だけでは限界がある。また民間企業には、大規模都市開発のマスタープラン(基本計画)作りや、新幹線や道路などの整備、空港・港湾の運営ノウハウが不足している。

公的機関の強み


 一方、独法などの公的機関は、インフラ整備の専門的な技術やノウハウを蓄積し、専門家を抱えている。公的機関として、中立性や交渉力も生かせる。政府はこうした状況を踏まえ、今国会にインフラ整備に携わる独法や公共性の高い企業について、海外インフラ調査、設計、入札支援などの業務実施の規定を追加する法律案を提出した。

 対象は高速鉄道や水資源、空港、道路など8分野15機関。鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)や水資源機構、都市再生機構などの独法と、成田と中部の国際空港会社や東日本高速道路など各地域の高速道路会社、二つの国際戦略港湾運営会社がある。

 インフラシステム海外展開行動計画では、18年度から鉄道、港湾、港湾、都市開発・不動産開発、建設産業の各分野別市場動向や日本の強み・弱みを整理。今後の海外展開と具体的な取り組みを示した。この中で、独法など公的機関の活用を示している。

 例えば鉄道では、鉄道の建設から運行、保守、事業運営までも含む「パッケージ」対応の取り組みを強化。鉄道・運輸機構が鉄道関連事業者と連携・協力し、高速鉄道の関係企業を調整し束ねるプロジェクトマネジメントに参画していく方針だ。
日刊工業新聞2018年5月8日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
今後、世界ではアジアを中心に膨大なインフラ整備の需要が見込まれている。日本の経済成長に取り込むため、今後もインフラの海外展開に向けた施策に取り組む必要性がありそうだ。 (日刊工業新聞社・村山茂樹)

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