「777」減産に「MRJ」延期…。中部の航空機サプライヤー、需要低迷に腐心

モビリティー全般、ドローン向けなど多角化進める

 中部地方の航空機サプライヤーが多角化を進めている。米ボーイングが次世代大型旅客機「777X」の2020年の運航開始を控え、現行機「777」を減産。三菱航空機(愛知県豊山町)が開発中の国産小型ジェット旅客機「MRJ」も、納入遅れで量産の見通しが立たない。現在の需要低迷で機体組み立てを担う企業は航空機を軸にしつつも、他分野を開拓する。

 「モビリティー全般を支える企業になる」―。東明工業(愛知県知多市)の二ノ宮啓社長は、航空機を核に移動手段全般に注力する姿勢をそう説明する。17年夏には「航空宇宙産業の一翼を担う」としてきた社是を、「モビリティーを通じて社会に貢献する」に変更した。

 同社は三菱重工業の協力会社として、ボーイングの航空機などの組み立て業務を担ってきた。MRJの組み立ての一部も担当する。だが、自動車、鉄道など航空機以外の業界を開拓してきた。

 その手段としてきたのが、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の加工だ。10―11年に長野県と大阪府のCFRP加工メーカーを買収し、両社を通じ自動車業界などから仕事を獲得してきた。4月に2社を合併して、双方の仕事を融通できる体制にした。

 モビリティー全般への拡大をさらに進めようと、17年には加藤鉄工(愛知県みよし市)を買収した。トヨタ紡織の下請けで、自動車用シートの生産ライン向け専用機を手がける。自動車業界への販路を開拓するほか、同社が持つ工作機械などの生産設備を、自社製品の試験装置などの部品加工に活用する。

 東明工業の売上高に占める航空機分野の比率は3分の1ほどに下がっている。ただ、二ノ宮社長は「航空機の看板を捨てたわけではない」と強調する。「航空機で培った信頼が他の仕事につながっている」と考えている。あくまで航空機を核に、モビリティー全般への拡大戦略を続ける。

 テックササキ(名古屋市熱田区)も航空機組み立てが主力だが、飛行ロボット(ドローン)による空撮測量やインフラ点検を新規事業に育てようと取り組む。足がかりとしてドローンの操縦技術を指導するスクールを17年11月に始めた。

 ドローンスクールを全国展開する日本UAV利用促進協議会(JUAVAC)と連携し、名古屋校として開校した。テックササキの親会社ササキ(同)と、航空機組み立てのエアロ(愛知県弥富市)の共同出資会社エアロテック(名古屋市熱田区)が運営する。スクールはテックササキ本社に置き、練習場の面積300平方メートルは、屋内型では愛知県内最大の広さだ。

 航空機組み立てで培った安全管理のノウハウを生かせると見込む。「危険を感じたら作業をやめる」といった安全順守の姿勢が、ドローン飛行中の事故予防に通じるという。自社の社員も受講させ、測量やインフラ点検に必要な操縦技術を習得させる。

 JUAVACのスクールは、測量と非破壊検査のコースがあるのが特徴だ。ドローンによる測量は、国土交通省の建設現場での情報通信技術(ICT)活用施策「アイコンストラクション」でも提唱されている。

 非破壊検査によるインフラ点検は、高速道路の橋梁など社会インフラの老朽化対策として期待される。

 テックササキは1年以上をかけ、測量などのコースの修了者を社内に10人以上輩出する画だ。事業基盤を整え、高速道路のインフラ点検などの仕事の受注を目指す。同社が手がける工場用天井クレーンのノウハウも生かせると見込む。

 同社はドローンに限らず、事業領域の拡大に意欲的だ。大西清幸専務は「既存事業に近い分野での新規事業や合併・買収(M&A)を進めたい」と今後を見据える。
(文=名古屋・戸村智幸)

日刊工業新聞2018年5月2日の記事から抜粋

日刊工業新聞 記者

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05月07日
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 一方、工具メーカーは航空機産業を開拓することで、主要顧客の自動車業界への依存度を減らそうとしている。切削工具大手のOSGは航空機産業の中心地の欧米で、機体の部品加工を担う中小製造業への提案活動に取り組んでいる。売上高に占める自動車分野の比率は5割を超えており、約1割にとどまる航空機分野の比率を高める戦略の一環だ。世界の航空機需要は今後、持続的な伸びが見込まれるが、機体組み立てを担う企業は、現在の需要低迷を補おうと手を広げている。工具メーカーは高い加工技術が求められる航空機産業に入り込むことで、自動車に次ぐ柱に育てる狙いだ。
(日刊工業新聞名古屋支社・戸村智幸)

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