大手ゼネコン、技能労働者不足解消へAI・ロボット活用待ったなし

現場作業の工期短縮や省人化を追求

 大手ゼネコンが生産性向上に照準を定め、技術開発を活発化させている。ここ数年、現場にタブレット端末を導入し、管理者の作業効率が向上した。業界の課題である技能労働者不足を解消しようと、情報通信技術(ICT)やロボット、人工知能(AI)など先端技術を駆使し、現場作業の工期短縮や省人化を追求する。各社の動きを探った。

竹中工務店、「手戻り」なくす


 竹中工務店は工法の工夫や最新のデジタル技術を使い、建築工事の生産性向上に取り組む。設計・施工では「フロントローディング」と呼ぶ基本計画の前倒しを徹底し、生産段階のモノ決めを早く確実に行う。施工を担当する協力会社が一からやり直す「手戻り」をなくし、現場の生産性を高める。

 設計段階では3次元(3D)モデリング技術の「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」やシミュレーション技術を適材適所で活用する。顧客と設計の基本合意を得る工程で時間短縮になる。「BIM推進室」が中心となり月に一度、効果的な活用事例や課題解決などの情報交換を実施。人材育成を含め、BIM普及を後押しする。

 施工段階では鉄骨に設備を組み込む複合化工法、プレキャストコンクリート(PC)化など地道な改善で、工期短縮や省人化に取り組む。ロボット関連機器も開発中だが、現場への普及を最優先に「自社に抱え込まず、機材センターやメーカーと協力していく」(川本英一生産本部生産企画部長)方針だ。

清水建設、自律型ロボ運用


 清水建設は技術研究所(東京都江東区)に建設ロボット実験棟を開設し、次世代生産システム「シミズスマートサイト」を担う柱溶接の「ロボ・ウエルダー」、天井や床材を2本の腕で施工する多能工ロボット「ロボ・バディ」、自動搬送の「ロボ・キャリア」などの運用を始めた。

 自ら考え、働き、感覚と知恵を持つ自律型ロボを志向し、先端技術を駆使して自己位置認識と対象物認識を搭載。統合管理システム「ロボ・マスター」により、全国の100現場、8000台のロボットやエレベーターを統括連携管理できる。秋には実際の建築現場に導入して順次、適用現場を増やす。

 省人化率の試算は30階建て基準階面積3000平方メートルの建物で70%を超えるが、工事全体ではまだ1・1%に過ぎない。現行ロボットの作業を一つのプラットフォーム(稼働基盤)と位置付け、「現場にある何千何万の作業を地道に適応させていく」(印藤正裕常務執行役員)考え。

大成建設、社員教育に力


 大成建設は「i―イノベーション」活動でICTを基軸に生産性向上や働き方改革に取り組む。全国13支店を含む60人の推進担当者が「ICTキャラバン」を実施。ICTの先端事例や正しい使い方、生産性向上事例を集め水平展開している。

 2003年に業界でいち早く情報共有ネットワーク「作業所Net」を導入、建築現場の施工図や工事記録など最新情報を一元管理できるようにした。自社開発の電子野帳アプリ「フィールドパッド」を使い、協力会社を含む約6800社がタブレット端末などで国内約700カ所の工事現場の最新図面を閲覧できる。工事現場の写真を撮り、印刷する作業時間は半減した。

 だが「デジタル化は便利な半面、技能者がうわべだけで仕事しがち」(池田宏俊建築総本部副本部長)と危惧し、技術者教育に力を注ぐ。建築系社員向けに「月刊生産性向上新聞」を配布。若手・中堅社員の基礎的な技術力、判断力を養う「技術道場」も開き、アナログな名称・手法も駆使して底上げを図る。

鹿島、ダム建設省力化


 鹿島は新桂沢ダム(北海道三笠市)のダム堤体建設工事で、幅15メートルのスライド型枠の一連の作業を全自動化した。タブレット端末から指示するだけで、コンクリート打設後の脱型から次の打設箇所までのスライドやセットまでを自動で行い、大幅に省力化できる。人手の作業に比べ作業時間を約36%削減した。

 さらに幅15メートルの自動化技術を拡張し、幅60メートルのスライド型枠の全自動化を計画する。理論上、型枠の作業時間を人手の作業に比べて約80%強削減できるとみて、効果の最大化を目指す。

 同社はこれらの省力化技術を「コンクリートダムをはじめ、橋の橋脚部や堤防など大型構造物にも幅広く展開する」(岡山誠土木管理本部土木工務部ダムグループ担当部長)としている。

大林組、深層学習を活用


 大林組はAI技術を駆使して山岳トンネル工事の切羽(掘削面)評価システムを開発中だ。ディープラーニング(深層学習)を使い、掘削面の画像と評価結果の学習を通じて地質状況を素早く、高精度に評価できる。トンネル工事に必要な吹き付けコンクリートやロックボルト、H形鋼など「支保工」を適切に設置し、工事の安全性、経済性を高められる。

 現在、評価項目や試行場所を増やし、適用性の確認を進める。9月めどに実用化段階に移行させ、18年内には現場への導入を目指す。「切羽の観察、作る作業は少なくとも半分以下になる」(畑浩二技術本部技術研究所地盤技術研究部部長)見込み。
技術研究所内で稼働する多能工ロボット「ロボ・バディ」(清水建設)

(文=神谷信隆)

日刊工業新聞2018年5月8日

葭本 隆太

葭本 隆太
05月08日
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技能労働者不足の解消に期待がかかるICTの活用ですが、某ゼネコンによる無人建機の遠隔操作デモを見学した際、その操作自体にも熟練が必要と感じました。ICTの導入拡大とともにその活用方法の教育体制なども重要になりそうです。

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