2025年度には技能労働者130万人減、ゼネコンで進む省人化
最新技術を駆使した新工法開発に知恵を絞る
ゼネコン各社が建設作業にロボットやICT(情報通信技術)などを活用した省人化工法の開発・導入を進めている。複数のロボットや建設機械をシステム化して自動的に作業したり、工場で生産した部材を現場で据え付けたりする工法を進化させている。建設業は将来的な担い手不足への対応や働き方改革を迫られており、最新技術の活用で課題解決に取り組む。
清水建設は自律型ロボットを活用する建築工事システム「シミズスマートサイト」を構築した。IoT(モノのインターネット)を駆使して現場情報を取り入れ、統合管理システムが管理する4種類のロボットが作業指示に基づき作業する。2018年度から建設現場に本格導入する予定だ。
ロボットの種類は建設現場で基盤となる施工や搬送、溶接といった作業から抽出した。「エクスター」は水平方向にブームを伸縮できる世界初のクレーン。柱溶接ロボット「ロボ・ウェルダー」は2台が連携して鉄骨柱を溶接する。「ロボ・バディ」は2本の腕で天井や床材を施工する多能工ロボット。「ロボ・キャリア」は自分で資材を積み込み、ルートを選んで運ぶ。
ロボットの稼働状況を把握する統合管理システムは、建物情報の入った3次元(3D)モデルと連動し、建物の状況に応じた作業が可能。ロボットとシステムの開発に20億円を投じた。
シミズスマートサイトの構築を指揮した印藤正裕常務執行役員は 「100現場、8000台のロボットを統括管理できる頭脳を持つ」という。
シミズスマートサイトを床面積3000平方メートルの30階建てビルに適用すると計6000人近くを省人化できると試算する。複数現場でロボットを転用した減価償却も可能だ。
開発では「人が使いたいと思えるもの」(印藤氏)を意識した。バブル期の90年代に全自動の施工システムを開発したが、維持や保管などのコストがかかり、使い勝手が悪かった。その反省を踏まえ、単なる機械ではなく作業者の“仲間”となるよう、ロボットの動きなどを考慮した。「ロボットを使えば少ない人数で作業できる」(同)と将来の建設現場を見据える。
鹿島が開発した建設機械の自動化システム「クワッドアクセル」は、土木工事で複数の建機が自律的に作業する。作業者の指示でダンプトラック、ブルドーザー、振動ローラーが連動し、土砂の運搬―荷下ろし―地ならし―締固めといった一連の作業を行う。熟練技能者の減少への対応や工事の生産性と安全性の向上を実現する。
開発に携わった三浦悟技術研究所プリンシパル・リサーチャーは「建設現場を最先端の工場へ」をキーワードにあげる。建設業は製造業と比べて労働生産性が低く、労働災害が多い。クワッドアクセルはこれらの問題を解決する切り札とみる。
これまでにダム現場で適用や実証を行ってきた。福岡県那珂川町の五ケ山ダムの堤体建設工事で、振動ローラーによる転圧作業を実施。ブルドーザーによる地ならしを実証した。
大分市の大分川ダムではダンプトラックによる土砂の運搬と荷下ろし試験を行った。18年度には福岡県朝倉市の小石原川ダムで現場実証する計画だ。
建機は市販品をベースに、全地球測位システム(GPS)やコントローラー、制御システムなどを装着した。建機の作業の効率化のため人工知能(AI)を活用して最適な作業パターンを見いだす。今後は油圧ショベルの自動化に取り組む。
さらに、将来の宇宙空間での建設作業を想定し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究中だ。月面や火星で拠点建設を実現する遠隔施工システムがテーマで「自動運転を活用できないか検討している」(三浦氏)。宇宙空間でクワッドアクセルが活用できれば、事業領域だけでなく夢も広がりそうだ。
三井住友建設はサトコウ(新潟県上越市、佐藤憲二社長)と共同で、高層・超高層の鉄筋コンクリート(RC)造の建物を高速施工する「スクライム―サット工法」を開発を進めている。躯体構築から内装仕上げまで、1フロアを最短4日で施工する。
工場で躯体を構築し、トイレやバス、ベッドや空調などの設備を据え付け、壁のクロスなど内装まで仕上げた建設ユニットをトレーラーで輸送。現場で組み合わせるのが特徴だ。配管類も事前に配置し、現場ではジョイントだけですむ。「極端に言えば、電気と水を通せば住める状態になる」(蓮尾孝一三井住友建設技術本部生産機械技術部機械化・自動化技術グループ長)。
一連の作業を工場で実施することで「生産性と品質を向上できる」(蓮尾氏)。仕上げに必要な技能労働者を半分から8割程度減らせる見込みで、省人化や工期短縮が可能。10―20階のビジネスホテルなどを想定し、訪日外国人需要を狙う事業者に提案していく。
三井住友建設は工場でコンクリート部材を造り、現場で組み合わせる工法が得意。サトコウは鉄骨造で設備と内装を仕上げたユニットの製造・販売で実績があり、両社の得意分野を融合する。
(文=村山茂樹)
ロボ統合管理、作業者の“仲間”
清水建設は自律型ロボットを活用する建築工事システム「シミズスマートサイト」を構築した。IoT(モノのインターネット)を駆使して現場情報を取り入れ、統合管理システムが管理する4種類のロボットが作業指示に基づき作業する。2018年度から建設現場に本格導入する予定だ。
ロボットの種類は建設現場で基盤となる施工や搬送、溶接といった作業から抽出した。「エクスター」は水平方向にブームを伸縮できる世界初のクレーン。柱溶接ロボット「ロボ・ウェルダー」は2台が連携して鉄骨柱を溶接する。「ロボ・バディ」は2本の腕で天井や床材を施工する多能工ロボット。「ロボ・キャリア」は自分で資材を積み込み、ルートを選んで運ぶ。
ロボットの稼働状況を把握する統合管理システムは、建物情報の入った3次元(3D)モデルと連動し、建物の状況に応じた作業が可能。ロボットとシステムの開発に20億円を投じた。
シミズスマートサイトの構築を指揮した印藤正裕常務執行役員は 「100現場、8000台のロボットを統括管理できる頭脳を持つ」という。
シミズスマートサイトを床面積3000平方メートルの30階建てビルに適用すると計6000人近くを省人化できると試算する。複数現場でロボットを転用した減価償却も可能だ。
開発では「人が使いたいと思えるもの」(印藤氏)を意識した。バブル期の90年代に全自動の施工システムを開発したが、維持や保管などのコストがかかり、使い勝手が悪かった。その反省を踏まえ、単なる機械ではなく作業者の“仲間”となるよう、ロボットの動きなどを考慮した。「ロボットを使えば少ない人数で作業できる」(同)と将来の建設現場を見据える。
複数の建機、自律的に作業
鹿島が開発した建設機械の自動化システム「クワッドアクセル」は、土木工事で複数の建機が自律的に作業する。作業者の指示でダンプトラック、ブルドーザー、振動ローラーが連動し、土砂の運搬―荷下ろし―地ならし―締固めといった一連の作業を行う。熟練技能者の減少への対応や工事の生産性と安全性の向上を実現する。
開発に携わった三浦悟技術研究所プリンシパル・リサーチャーは「建設現場を最先端の工場へ」をキーワードにあげる。建設業は製造業と比べて労働生産性が低く、労働災害が多い。クワッドアクセルはこれらの問題を解決する切り札とみる。
これまでにダム現場で適用や実証を行ってきた。福岡県那珂川町の五ケ山ダムの堤体建設工事で、振動ローラーによる転圧作業を実施。ブルドーザーによる地ならしを実証した。
大分市の大分川ダムではダンプトラックによる土砂の運搬と荷下ろし試験を行った。18年度には福岡県朝倉市の小石原川ダムで現場実証する計画だ。
建機は市販品をベースに、全地球測位システム(GPS)やコントローラー、制御システムなどを装着した。建機の作業の効率化のため人工知能(AI)を活用して最適な作業パターンを見いだす。今後は油圧ショベルの自動化に取り組む。
さらに、将来の宇宙空間での建設作業を想定し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同研究中だ。月面や火星で拠点建設を実現する遠隔施工システムがテーマで「自動運転を活用できないか検討している」(三浦氏)。宇宙空間でクワッドアクセルが活用できれば、事業領域だけでなく夢も広がりそうだ。
ユニット結合、高速施工
三井住友建設はサトコウ(新潟県上越市、佐藤憲二社長)と共同で、高層・超高層の鉄筋コンクリート(RC)造の建物を高速施工する「スクライム―サット工法」を開発を進めている。躯体構築から内装仕上げまで、1フロアを最短4日で施工する。
工場で躯体を構築し、トイレやバス、ベッドや空調などの設備を据え付け、壁のクロスなど内装まで仕上げた建設ユニットをトレーラーで輸送。現場で組み合わせるのが特徴だ。配管類も事前に配置し、現場ではジョイントだけですむ。「極端に言えば、電気と水を通せば住める状態になる」(蓮尾孝一三井住友建設技術本部生産機械技術部機械化・自動化技術グループ長)。
一連の作業を工場で実施することで「生産性と品質を向上できる」(蓮尾氏)。仕上げに必要な技能労働者を半分から8割程度減らせる見込みで、省人化や工期短縮が可能。10―20階のビジネスホテルなどを想定し、訪日外国人需要を狙う事業者に提案していく。
三井住友建設は工場でコンクリート部材を造り、現場で組み合わせる工法が得意。サトコウは鉄骨造で設備と内装を仕上げたユニットの製造・販売で実績があり、両社の得意分野を融合する。
(文=村山茂樹)
日刊工業新聞2017年11月17日