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三菱ふそう、トラック10万台をコネクテッド化する理由

「データ駆動型の企業に変えていく」(ルッツ・ベックCIO)
三菱ふそう、トラック10万台をコネクテッド化する理由

IT戦略「コネクテッドX」を説明する三菱ふそうトラック・バスのベックCIO

 三菱ふそうトラック・バスがIT戦略を深化する。IT戦略に関する説明会「FUSO・デジタル・フォーラム」で、三菱ふそうと親会社の独ダイムラーのインド生産子会社が協業する組織「DTA」を司令塔に位置付けて開発や生産、車両などから得た多様な情報を製品やアフターサービス、経営上の意思決定といった多方面で活用する方針を打ち出した。デジタル化により製品やサービスに付加価値を付けて他社と差別化する。

「データ駆動型の企業に変えていく。我々は破壊的イノベーションを起こす側にならないといけない」。三菱ふそうのルッツ・ベック最高情報責任者(CIO)は、4月25日の説明会で、デジタル分野で商用車メーカーのリーダーになる姿勢を強調した。

三菱ふそうが推進するIT戦略「コネクテッドX」。共通のクラウド型プラットフォーム(基盤)を構築し、トラックに搭載したコネクテッド機器が収集した情報や、工場の自動装置の情報といったビッグデータをDTAに集積する。そのデータを分析し、迅速な意思決定に役立てる。

DTAは2020年までに10万台のトラックをコネクテッド化する方針。開発現場からの膨大な開発データもあり、膨れ上がる情報を迅速に分析する必要が出てくる。このため、データ管理ソリューションサービスを手がける米ホートンワークス(カリフォルニア州)と協業して、共通化プラットフォームの確立を目指す方針だ。三菱ふそうの中村圭吾ITインフラ部長は「グーグルなどの異業種が(自動車産業に)参入している。自動車の製販だけでなく、先端技術で付加価値を生むことが重要になる」と指摘する。

車両開発や生産プロセスでのデジタル化も同時並行で進める。例えば、米マイクロソフトのゴーグル型複合現実(MR)端末をデザイン部門で18年12月末までに導入する。MR端末で作り込んだ後に粘土から削り出したクレイモデルを作製することで設計時間を短縮する。

他の日系商用車メーカーもデジタル化、特にコネクテッド分野に注力する。日野自動車は今月から衝突被害軽減ブレーキ「PCS」の作動状況を運送会社の運行管理者にメールで伝えることなどができる新しい情報通信技術(ICT)サービスを開始。いすゞ自動車は遠隔で車両の運行情報を収集・解析できるテレマティクス「MIMAMORI」のサービスを17年に全面刷新した。UDトラックスも通信機能で車両を遠隔診断するサービスを展開する。
日刊工業新聞2018年5月2日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
商用車業界では、デジタル分野の深化が新しい競争軸の一つとして存在感を高めている。 (日刊工業新聞社・尾内淳憲)

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