工業用ゴムが主軸の中小企業、医療・健康関連の開拓を急ぐ理由

フコク物産が次世代の柱に育成へ

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フコク物産社長・木部美枝氏
 フコク物産(東京都大田区、木部美枝社長)は、自らも技術ノウハウを蓄える“開発型商社”として、工業用ゴムや樹脂製品を軸に事業展開してきた。納入先は自動車向けを主に、建設・農業機械や鉄道、OA機器、住宅と幅広い。だが、電気自動車(EV)の普及に伴い、将来は事業環境が変わることも予想される。このため、医療や健康分野など次世代の柱のひとつになりそうな事業の育成にも力を入れる。木部社長に展開と見通しを聞いた。

 ―自動車や建設機械向けに工業用ゴム製品の納入が好調です。
 「海外向けが年率7―8%伸びている。昨今は建設機械向けの伸びが大きい。海外向けを入れると、売上高はピークだった2008年度に並びそう。好調だからこそ投資して設備を増強するとともに、EVの普及といった将来起こり得る環境変化を見据え、新事業に取り組む必要がある。長期の視点から事業構成を見直していく」

 ―新事業の立ち上げ状況はいかがでしょう。
 「社内で選抜した数人に対し、トップが“何をやっても良い”とお墨付きを与え、5年ほど前から新事業の種探しを進めてきた。技術面では防振ゴムで培ってきたノウハウを応用できる。だが、BツーC(対消費者)になると経験が浅いこともあり、マーケティングは手探りの状態だ。代理店網を築くなど販路開拓が難しい」

 ―事業の見直しも進めているようです。
 「消費者の嗜好(しこう)が携帯電話からスマートフォンに変わり、携帯関連の需要が縮小した。このため、携帯関連を担っていた静岡工場(静岡県伊豆の国市)の役割を変更した。現在、同工場の2階を研究開発拠点としている。クリーンルームを設置し、医療やバイオ関連の研究開発に取り組み、事業化を進めている」

 ―医療関連の研究開発とその事業化は難しい面もあります。
 「関係の深いメーカー、大学などの研究機関と共同で進めている。医療用として、試薬を入れて反応させる検査用チップ(流体デバイス)の開発に取り組み、やっと芽が出てきた。シリコーンの一種であるPDMSを成形する際に、線幅が数十マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の流路をつくれるようになった。18年後半には量産できる見通しだ。この分野は手つかずだったため、先駆者になれる」

 ―健康分野でも新商品を扱い始めました。
 「車いすに腰掛けた際に座面に敷いたシートで体圧分布を測定するシステムや、人工呼吸時の胸骨の圧迫位置を可視化できる訓練用システムなど、健康分野の商品を扱うようになった。5年ほどで商品ラインアップが増えている。総代理店の当社は、中国や東南アジアにも拠点を持つため、海外市場への拡販も考えている」
PDMSチップの流路パターン

日刊工業新聞2018年5月1日

COMMENT

フコク物産の事業構成は工業用ゴム製品が約85%、樹脂製品が10%強、それ以外が約5%。18年5月期の売上高は約190億円(海外向け・物流事業を除く)になる見通し。ここ数年の業績は安定しているが、主な納入先である自動車産業は向こう数十年で、駆動源が内燃機関から電気モーターに代わるといわれる。本業で得た資金を医療や健康分野などの新事業に継続して回せるかどうかがカギになりそう。 (日刊工業新聞社南東京支局長・安久井建市)

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