人がまったく採れないの大合唱!中小経営者たちの「生声」聞きました
「工夫には限界。政府には労働力確保の抜本策を」
国内の人手不足は深刻さを増し、就職戦線は空前の“売り手市場”だ。中小企業の置かれた環境はいっそう厳しくなっており、いわゆる「人手不足倒産」の件数も上昇しているという。中小各社も優秀な人材を獲得するため、待遇や職場環境の改善に全力で取り組んでいる。
<藤井製作所>紹介で報奨金
藤井製作所(東京都江戸川区)の藤井隆社長は「新卒と中途の従業員を募集しても、なかなか採用には結び付かない」と嘆く。そのため2015年から、従業員の紹介で入社した従業員が1年間勤務した場合、紹介した従業員に報奨金を与える制度を導入。すでに3人の実績がある。その一方で藤井社長は「外国人労働者を受け入れたい。日本の労働人口が減少する中で、生産をキープするには必要だ」と外国人の採用に前向きな姿勢を示す。
<岡田鈑金>「賃上げ必要」
茨城県小美玉市に工場を持つ精密板金加工の岡田鈑金(東京都大田区)は近く、従業員の賃金引き上げに踏み切る。増田武夫社長は「人口減少などの影響で人材確保は年々厳しさを増している。最低賃金の改定に関係なく、優秀な人材をいち早く確保するため賃上げは必要」と危機感を募らせる。
同社は生産ラインにおけるロボットの積極導入などで効率化を進めるが、増田社長は「工夫には限界がある。政府には労働力確保の抜本策をお願いしたい」と期待する。
<光学技研>「税制見直しを」
「賃金自体を上げることは問題ない。ただ、働く意欲があってもパート女性社員の勤務時間を増やせないことが問題」と語るのは、光学部品を手がける光学技研(神奈川県厚木市)の岡田幸勝社長だ。同社は最低賃金を上回る時給で給与を提供し、正社員、パートともに採用を増やしている。
業務多忙のためパート女性の正社員への登用を検討したこともあった。だが、対象の全員が夫の扶養に入り、かつ扶養控除の枠内で働きたいとの希望だったため、勤務時間を延ばせないというジレンマが生じている。岡田社長は「控除の範囲を広げるなど税制面の見直しが必要だ」と訴える。
<ティー・エム・ピー>仕事の質重視
自動化機器製造のティー・エム・ピー(茨城県日立市)は独自製品の開発で安定的に受注を得ており、最低賃金の引き上げ決定も「影響はない」(高橋一雄社長)。
だが今後については「少子化、働き方改革、賃金水準の上昇で中小にはますます人が来なくなってくる。中小は質の高い仕事ができないと大企業からも人材からも選ばれず、生き残れない」と気を引き締める。
行政に対しては「賃金改定という枠で議論するのではなく、事業承継を行う中小に関わる税制の改革など、中小経営を広く見た上での支援を期待したい」と語る。
<早川ゴム>一斉有休を運用
工業用ゴム製品を手がける早川ゴム(広島県福山市)の、早川雅則社長は、「今年4月から企業内最低賃金を時給790円から850円に変更し、労使間で協定を結んでいる」と説明する。
このため、最低賃金改定も「当社は企業内最低賃金で支給されている人は存在しないので、影響はない」。一方で「将来的に人手不足が深刻化し、外国人労働者を雇用する場合に影響があると思う」と懸念する。
人手不足による賃金上昇傾向への対策の一環として「有給休暇取得率を改善するため、今年から2日間を一斉有休として運用している」。また、「生産性向上に合わせて賃金を引き上げたいが、賃金制度自体の見直しが必要になる」との認識だ。
<イワシタ>AI導入探る
イワシタ(福井市)は、アルミニウムや鉄の長尺材料の数値制御(NC)加工機を製造販売する。製品は顧客ごとの一品仕様が多く、専門のスキルが必要で、給与待遇は従来から重視している。
新卒採用の需給はタイト。人手不足を念頭に導入を探っているのが、顧客に応じた仕様設計を人工知能(AI)が支援すること。ロボットの活用も考えているが「AIの方が可能性がありそう」(岩下大介社長)。
多角化の一環で7月にはフランチャイズ契約によるステーキ店を福井市内に開業した。同店は飲食・サービス業として社員の待遇を厚くしており、時給は「福井市内で一番高いはず」。だが、「募集してもなかなか人が集まってこない」と、製造業とサービス業の違いを感じている。
<アイム電機>中小も努力を
アイム電機工業(北九州市八幡西区)の小野隆二郎社長は「問題は人材育成だ」と話す。経営資源が限られた中小にとって、教育に時間とコストをかけても定着がおぼつかないようでは困る。中堅や幹部社員をしっかり管理教育し、「入社から日の浅い若手社員は業務でのミスマッチが起きないよう目配りする必要がある」という。
政府に対しては「経済、特に為替相場の安定をお願いしたい。急激な為替相場の変動は、輸出企業にとって問題だ」とした上で、「自分たちも努力しなければならない。外部環境に左右されない安定した経営が必要だ」と気を引き締める。
<羽根田商会>学生が来ない
機械部品商社の羽根田商会(名古屋市中区)では新卒で3人を採用予定。佐藤祐一社長は「昨年はすんなり採れたが今年は、まだ内定ゼロ」という。「例年は6月頃大手が内定を出し終え、夏には中小に学生が回ってきた。今年は来ない」と不安視する。
社員のつなぎ留めにも必死だ。羽根田商会ではシステム刷新や意識付けで業務の効率化を進め、1日の就業時間を短縮しつつ残業時間を月平均40時間から同18・5時間に削減した。「過去3年間に辞めた社員はゼロ」という。
佐藤社長は愛知中小企業家同友会の代表理事も務めており、「小売り・飲食業などパート・アルバイトを多く使う企業では時給上昇で経営が圧迫される状況が日常化した」と指摘する。
正社員採用には「最低賃金引き上げの影響はすぐにはない」としつつ「中小企業の採用活動は昨年以上に厳しくなっている」と分析する。行政に対し「社会全体で残業を減らすなら、終業後に社会人が大学などで安い授業料で学べる制度がほしい」と要望する。
<藤井製作所>紹介で報奨金
藤井製作所(東京都江戸川区)の藤井隆社長は「新卒と中途の従業員を募集しても、なかなか採用には結び付かない」と嘆く。そのため2015年から、従業員の紹介で入社した従業員が1年間勤務した場合、紹介した従業員に報奨金を与える制度を導入。すでに3人の実績がある。その一方で藤井社長は「外国人労働者を受け入れたい。日本の労働人口が減少する中で、生産をキープするには必要だ」と外国人の採用に前向きな姿勢を示す。
<岡田鈑金>「賃上げ必要」
茨城県小美玉市に工場を持つ精密板金加工の岡田鈑金(東京都大田区)は近く、従業員の賃金引き上げに踏み切る。増田武夫社長は「人口減少などの影響で人材確保は年々厳しさを増している。最低賃金の改定に関係なく、優秀な人材をいち早く確保するため賃上げは必要」と危機感を募らせる。
同社は生産ラインにおけるロボットの積極導入などで効率化を進めるが、増田社長は「工夫には限界がある。政府には労働力確保の抜本策をお願いしたい」と期待する。
勤務時間を延ばせないジレンマ
<光学技研>「税制見直しを」
「賃金自体を上げることは問題ない。ただ、働く意欲があってもパート女性社員の勤務時間を増やせないことが問題」と語るのは、光学部品を手がける光学技研(神奈川県厚木市)の岡田幸勝社長だ。同社は最低賃金を上回る時給で給与を提供し、正社員、パートともに採用を増やしている。
業務多忙のためパート女性の正社員への登用を検討したこともあった。だが、対象の全員が夫の扶養に入り、かつ扶養控除の枠内で働きたいとの希望だったため、勤務時間を延ばせないというジレンマが生じている。岡田社長は「控除の範囲を広げるなど税制面の見直しが必要だ」と訴える。
<ティー・エム・ピー>仕事の質重視
自動化機器製造のティー・エム・ピー(茨城県日立市)は独自製品の開発で安定的に受注を得ており、最低賃金の引き上げ決定も「影響はない」(高橋一雄社長)。
だが今後については「少子化、働き方改革、賃金水準の上昇で中小にはますます人が来なくなってくる。中小は質の高い仕事ができないと大企業からも人材からも選ばれず、生き残れない」と気を引き締める。
行政に対しては「賃金改定という枠で議論するのではなく、事業承継を行う中小に関わる税制の改革など、中小経営を広く見た上での支援を期待したい」と語る。
<早川ゴム>一斉有休を運用
工業用ゴム製品を手がける早川ゴム(広島県福山市)の、早川雅則社長は、「今年4月から企業内最低賃金を時給790円から850円に変更し、労使間で協定を結んでいる」と説明する。
このため、最低賃金改定も「当社は企業内最低賃金で支給されている人は存在しないので、影響はない」。一方で「将来的に人手不足が深刻化し、外国人労働者を雇用する場合に影響があると思う」と懸念する。
人手不足による賃金上昇傾向への対策の一環として「有給休暇取得率を改善するため、今年から2日間を一斉有休として運用している」。また、「生産性向上に合わせて賃金を引き上げたいが、賃金制度自体の見直しが必要になる」との認識だ。
<イワシタ>AI導入探る
イワシタ(福井市)は、アルミニウムや鉄の長尺材料の数値制御(NC)加工機を製造販売する。製品は顧客ごとの一品仕様が多く、専門のスキルが必要で、給与待遇は従来から重視している。
新卒採用の需給はタイト。人手不足を念頭に導入を探っているのが、顧客に応じた仕様設計を人工知能(AI)が支援すること。ロボットの活用も考えているが「AIの方が可能性がありそう」(岩下大介社長)。
多角化の一環で7月にはフランチャイズ契約によるステーキ店を福井市内に開業した。同店は飲食・サービス業として社員の待遇を厚くしており、時給は「福井市内で一番高いはず」。だが、「募集してもなかなか人が集まってこない」と、製造業とサービス業の違いを感じている。
「過去3年間に辞めた社員はゼロ」も
<アイム電機>中小も努力を
アイム電機工業(北九州市八幡西区)の小野隆二郎社長は「問題は人材育成だ」と話す。経営資源が限られた中小にとって、教育に時間とコストをかけても定着がおぼつかないようでは困る。中堅や幹部社員をしっかり管理教育し、「入社から日の浅い若手社員は業務でのミスマッチが起きないよう目配りする必要がある」という。
政府に対しては「経済、特に為替相場の安定をお願いしたい。急激な為替相場の変動は、輸出企業にとって問題だ」とした上で、「自分たちも努力しなければならない。外部環境に左右されない安定した経営が必要だ」と気を引き締める。
<羽根田商会>学生が来ない
機械部品商社の羽根田商会(名古屋市中区)では新卒で3人を採用予定。佐藤祐一社長は「昨年はすんなり採れたが今年は、まだ内定ゼロ」という。「例年は6月頃大手が内定を出し終え、夏には中小に学生が回ってきた。今年は来ない」と不安視する。
社員のつなぎ留めにも必死だ。羽根田商会ではシステム刷新や意識付けで業務の効率化を進め、1日の就業時間を短縮しつつ残業時間を月平均40時間から同18・5時間に削減した。「過去3年間に辞めた社員はゼロ」という。
佐藤社長は愛知中小企業家同友会の代表理事も務めており、「小売り・飲食業などパート・アルバイトを多く使う企業では時給上昇で経営が圧迫される状況が日常化した」と指摘する。
正社員採用には「最低賃金引き上げの影響はすぐにはない」としつつ「中小企業の採用活動は昨年以上に厳しくなっている」と分析する。行政に対し「社会全体で残業を減らすなら、終業後に社会人が大学などで安い授業料で学べる制度がほしい」と要望する。
日刊工業新聞2017年8月17日