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銀座シックスが映し出す「消費の一人二極化」

フロントリテイリング社長・山本良一、成熟社会への挑戦を話そう
銀座シックスが映し出す「消費の一人二極化」

来店客の6割が20~30代(銀座シックス公式ページより)

 大型商業施設「GINZA SIX」の開業から1年が経過した。大丸、松坂屋を展開する当社にとって「GINZA SIX」の運営は百貨店事業とは一線を画す新業態の象徴であり、成熟化した消費社会への挑戦でもある。東京・銀座の新たな顔として、国内外から多くのお客さまが足を運ぶ姿を前に、まずは安堵(あんど)している。

 手応えの一つが、顧客層の変化だ。同施設の来店客を世代別にみると、20代から30代が全体のほぼ6割を占める。

 高齢化が進む既存の百貨店ではみられない現象だ。出店ブランドの半数以上が最重要拠点である「旗艦店」と位置づけている。他では手に入らない特別な一品を求める消費者の心をつかんでいると分析する。

 個人消費は持ち直しつつあるとはいえ、力強さに欠ける。デフレ脱却、経済再生を確固たるものにするには国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費の動向がカギを握るだけに、政府は企業に賃上げを促すと同時に、プレミアムフライデーをはじめ施策総動員で消費喚起の旗を振る。

 こうした消費喚起を狙ったキャンペーンは、中長期的な視点で継続的に取り組んでこそ意味があると考える。半面、消費の最前線に身を置く者として、自戒も込めて敢えて指摘するならば、消費構造の変化を見据えた企業努力を、我々は果たして十分行ってきたのかという点だ。

五感に訴える


 とりわけ、今の若者世代は、ライフスタイルや消費に対し自分なりの明確な価値基準を持つ。どんなに品質が素晴らしくとも、いくら値頃感があろうとも、自身の尺度に合致しなければ財布のひもを容易に緩めない。逆に、こだわりのあるモノや体験には他の支出を切り詰めてでも投資を惜しまない「消費の一人二極化」現象が顕著だ。GINZA SIXの顧客層からも、そんな姿がうかがえる。

 だからこそGINZA SIXは、五感に訴える店舗づくりを重視した。ここでしか手に入らない商品に触れる機会や、アートで彩られた非日常の空間を創造することで、心の奥底に眠る潜在的なニーズや感性を刺激し、それに応える商品を取りそろえることで新たな消費をかき立てたいと考えている。

 ネットでモノが買える時代だからこそ、リアルな場が価値を生む。エモーショナルな部分を刺激しないと、顧客は振り向いてくれない。
山本良一社長
日刊工業新聞2018年4月25日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
山本社長は「消費の変化の波はあらゆる場面に押し寄せている。顕在化している現象の裏には何があるのか、人々は何に価値を見いだしているのか」と問う。その中で「我々は、どのような役割を果たし、何を提供できるのかを突きつけられている。行き着いた答えのひとつが、くらしの『あたらしい幸せ』を発明するというビジョン」だったと話す。

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