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NTTの「ひかりTV」、ネット配信市場の激化で生き抜く秘策は?

ARコンテンツを拡充
NTTの「ひかりTV」、ネット配信市場の激化で生き抜く秘策は?

ピック型ARマーカーにスマホをかざすと3Dの布袋氏が演奏

 NTTぷららが運営する映像配信サービス「ひかりTV」が10周年を迎えた。会員数が2010年に100万人、12年に200万人を突破したが、300万人を超えた15年以降は伸び率が鈍化している。ネット配信業者の台頭でテレビ向けユーザー数が伸び悩む中、スマートフォンや拡張現実(AR)など向けのコンテンツ拡充で次の10年の成長につなげる。

 「10年一区切り。従来のひかりTVから新しい事業領域を開いていかなければならない」―。都内で開いた10周年イベントで板東浩二社長は、こう宣言した。板東社長は新事業領域について「一言で言うならコンテンツビジネス戦略会社に生まれ変わって進化したい」と明かす。具体的にはスマホ向けコンテンツ・アプリ市場の開拓、ARや仮想現実(VR)を使った“新体感”映像コンテンツの制作、新技術・新サービスの導入だ。

 スマホ向けの開拓ではNTTドコモと連携し、31の専門チャンネルをスマホやタブレットで楽しめる映像配信サービス「dTVチャンネル」の提供を1月末に始めた。6月にはNTTドコモ向けのサービスとして、ひかりTVをカスタマイズ(個別対応)した「ひかりTV forドコモ」の提供を予定している。

 新体感映像コンテンツでは、岡田武史元日本代表監督がオーナーのサッカーチーム「FC今治」のスタジアムをスマート化。スタジアム内限定ウェブサイトにアクセスすることで、その日最も活躍した選手を決定する「MVP投票」に参加できたり、ARマーカーを専用アプリで読み取ることでスタジアム近隣の商業施設で利用できるクーポンを入手できたりする仕組みを整えた。

 新技術の導入では、マルチアングル配信技術やAR技術を用いて布袋寅泰氏のライブ映像を楽しめるスマホアプリ「布袋寅泰 新体感ライブ」を配信している。

 英ロンドンで行われた布袋氏のスタジオライブをさまざまな角度のカメラ映像から選んで視聴可能。オリジナルのピック型ARマーカーにスマホをかざすと布袋氏がバーチャル3Dフィギュアになってスマホの画面に出現し映画「キル・ビル」のテーマ曲を演奏する。

 このARマーカーを使った3Dバーチャルフィギュアコンテンツ「ひかりTV VF」は協業の提案を複数受けており、「1年かけてプロモーションしながら本格的に広げていきたい」(板東社長)という。
   
日刊工業新聞2018年4月26日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
板東社長はイベント中、「新しい独自コンテンツを作って市場を拡大していく必要がある」と繰り返し強調した。1カ月当たりのビデオオンデマンド視聴回数が約2500万回といった基盤を持つだけに、新技術を使ったコンテンツ作成に向け映像制作会社など幅広い業界の事業者との連携が次の10年の成功のカギとなりそうだ。 (日刊工業新聞社・水嶋真人)

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