ライブコマースで抜け出すのはメルカリか、楽天か、タレントかそれとも…

購買促す起爆剤、最適解を模索

 インターネット上でライブ動画を配信しながら商品を紹介し、販売促進につなげる「ライブコマース」の活用が広がっている。KDDIやヤフーなどが多様な店舗が出店する自社のネット通販モールに機能を導入し始めた。ネット通販は一般に買い手が欲しい商品を検索して購入する。一方、ライブコマースは売り手の紹介により商品との出会いを演出する。ネット通販の新たな購入経路として市場拡大の起爆剤になる可能性を秘めている。

 「キャンディーのような甘い香りがしますよ」―。リップクリームの新商品を紹介する男性アイドルがほほ笑み、視聴者からの商品の香りについての問いに答えた。

 KDDIがテレビ朝日と共同で1月に試行を始めたライブコマースの一幕だ。約1時間の配信で視聴数は約2000件に達した。

 テレビ通販のネット版に例えられるライブコマースは、買い手となる視聴者がスマートフォンで視聴しながら質問などを投稿できる。

 テレビ通販にはない質問機能を通じた買い手との対話が、販促効果を高める肝だ。動画により、文章や画像に比べて商品の使い方などをわかりやすく紹介できる。紹介する商品は洋服や化粧品、日用品など多種多様だ。

 ライブコマースは「人の力で売れる」と言われる。視聴者は対話などを通じて配信者のファンになり、「その人が紹介するからこそ商品を買う」という流れが生まれる。

 ライブコマースで先行する中国では「キー・オピニオン・リーダー(KOL)」と呼ばれる影響力のある個人が市場の拡大をけん引する。

 KDDIはネット通販モール「Wowma!(ワウマ)」の集客力を高める施策として、テレ朝の通販番組と連動するライブコマースを試験導入した。

 通販番組に登場する男性アイドルらが動画を配信する。ワウマの利用者に多い20―30代の女性に訴求力がある若手俳優らに、KOLとして白羽の矢を立てた。KDDIコマースビジネス部の大野大輔コマース2グループリーダーは「KOLを活用したライブコマースにより、他のモールと差別化する」と狙いを話す。

 楽天のネット通販モール「楽天市場」も、タレントを前面に活用したライブコマースを展開する。16年5月のライブコマース開始当初は「楽天市場」の出店店舗の担当者らが商品を紹介する動画が中心だったが、視聴者数が伸びなかった。

 楽天ECカンパニー企画部の大津健太郎マネージャーは「当初はネット上でテレビ通販を展開するコンセプトだった」という。

 だが、チャンネルが限られたテレビでは、頻繁にチャンネルを切り替えながら視聴する“ザッピング”などでも番組にたどり着くのに対し、「ネットは検索などの能動的な行動が必要になるため視聴者に受け入れられなかった」と振り返る。

 そこで視聴者が集まるプラットフォーム(基盤)作りを優先する方向にかじを切った。それがタレントを軸にした集客というわけだ。

 現在は「楽天市場」で店舗が出品している食べ物の味などをタレントがリポートする企画などを立て、視聴者の拡大を図っている。
「ヤフーショッピング」で展開するライブコマース。

売り手が発信、気軽に使える販促武器


 一方、タレントの力を活用したライブコマースには否定的意見もある。メルカリ(東京都港区)の伊豫健夫執行役員は「(タレントの活用は)持続性の確保が難しい」と指摘する。

 タレントの起用には出演料などが発生し、継続的な活用には、それに対応した事業モデルが必要になるためだ。

 メルカリは個人間で売買できるフリマアプリ「メルカリ」で17年7月にライブコマース機能を導入した。素人の売り手が自由に動画を配信し、商品を紹介できる。現在は1日約800人が配信しているという。

 「メルカリ」では個人が手作り品などを売買する。ライブコマースで売り手の商品への思いなどが一層買い手に伝えられ、取引が活性化すると見込んだ。同時に誰もが平等に使える基盤との自負もあり、タレントの継続的な活用はなじまないと判断した。

 ヤフーのネット通販モール「ヤフーショッピング」も、売り手となる出店店舗が自由にライブ配信できる機能を17年11月に導入した。
 
 ヤフーショッピングカンパニープロダクション1本部の河内俊介部長は「タレントの活用でにぎわいを演出するよりも、出店店舗が気軽に販促に使える武器を提供したかった」と力を込める。

 ヤフーは13年に「ヤフーショッピング」の出店料を無料化するなど抜本的な改革で出店店舗数を拡大し、流通総額を大幅に伸ばした。

 しかし、店舗ごとの売り上げの伸びはほとんどないことが課題だったという。だからこそ、ライブコマースを各店舗が平等に利用できる武器として提供することを意識した。

 ただ、メルカリやヤフーの仕様は視聴者を集めるのが容易ではない。両社は「(素人によるライブ動画で視聴者を集める)難しさはある」と口をそろえる。

 テレビ通販業界の関係者は「(テレビ通販は)プロのアナウンサーによる説明力や掛け合いが視聴者を惹きつける力になる。商品を説明するツールが文章や画像から動画に変わっただけでは、販促効果を上げるのは難しいだろう」と推察する。このため、メルカリやヤフーは定期的な配信を促したり、視聴者の質問への対応方法を助言したりして地道に配信者を育成する。


 各社がライブコマースを導入する背景には、ネット通販市場をいっそう拡大する起爆剤にする狙いがある。ネット通販は一般に買い手が欲しい商品を検索して購入する。これに対し、ライブコマースは売り手が紹介する商品を購入する新しい販売経路を生み出す。
            

(文=葭本隆太)

日刊工業新聞2018年2月20日

葭本 隆太

葭本 隆太
02月21日
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 ネット通販市場に詳しいコマースデザイン(東京都渋谷区)の坂本悟史代表取締役は「ネット通販は(衝動購買など消費者が元々の購入予定がない商品を買う)非計画購買の分野で発展の余地があり、ライブコマースはそれを促す起爆剤になる可能性がある」と指摘する。会員制交流サイト(SNS)などを通じたライブ動画配信の普及で、スマホで多様なライブ動画を視聴する環境が整い、ライブコマース市場が育つ土壌ができつつある点も追い風だ。
 タレントの活用が有効か、自由に利用できるツールが正解なのか、各社はライブコマースの活用法の最適解を模索している。巨大市場となる可能性があるライブコマースで主導権を握るため、各社の試行錯誤は続きそうだ。

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