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全国2位の“EVショック度”、危機感が浜松を突き動かした!

中小企業の支援拠点、120社が結集し宝の技術を生かす
全国2位の“EVショック度”、危機感が浜松を突き動かした!

次世代自動車センターの開所式(左から4人目が望月センター長)

 自動車関連産業が集積する静岡県で、電動化や自動運転など技術革新への対応を支援する取り組みが始まった。浜松地域イノベーション推進機構(浜松市中区)は産学官連携による中小企業の支援拠点「次世代自動車センター」を1日に開設。スズキで車両開発や部品調達の経験がある望月英二氏がセンター長に就任し、「来る者は拒まず。会員企業の意識や技術に合った支援を展開したい」と意気込む。

 電気自動車(EV)の普及が与える影響度を示す“EVショック度”は―。静岡経済研究所が行った調査で、静岡県は群馬県に次ぐワースト2位。地元の危機感がセンター設立を後押しした。

 スタート時点の会員は約120社。大手から中堅・中小の部品メーカー、モノづくり企業以外にもCADなどソフトウエア開発や輸送業、県外からも多彩な顔ぶれがそろった。コーディネーターには地元大手のスズキやヤマハ発動機からの出向者が就任した。

 「すでに部品を開発して走っている企業もあれば、まだ眠っている企業もある」(望月センター長)。会員企業の熱意や技術レベルを知るため、まずは意識調査に取り組んだ。アンケート方式で各社の固有技術や取引先、次世代技術への取り組みを確認。6月に開く「技術セミナー」で最初の分析結果を報告する予定だ。

 今月23日には「次世代自動車センター設立記念講演会」を浜松市内で開催する。経済産業省製造産業局の河野太志自動車課長が国の次世代自動車戦略について基調講演するほか、ASTIなどの地元企業が参加するパネルディスカッションも行う。

 コーディネーターによる会員企業の訪問も始まる。5月にはハイブリッド車用部品を製造するデンソーの工場を見学するなど、“現場・現物・現実”重視の実益ある活動を目指す。

次世代自動車センター長・望月英二氏に聞く


 ―次世代自動車センターが始動しました。
 「1月から準備し、いよいよ始まったなと使命感を感じている。会員募集では地元企業の関心の高さが伝わってきた。一方で、危機感には温度差があり、各社の意識に合わせた支援が必要と感じた」

 ―独自の取り組みは。
 「見学した埼玉や広島のセンターは技術的視点がきちんと垣間見える活動をしている。そこで学び、情報を得たことを静岡でもやってみたい。まずは会員企業の技術を把握し、地域に合った特色を出すため頭をひねろうと思っている」

 ―スズキでの経験や人脈をどう生かしますか。
 「購買の経験を生かし、ティア1(1次)サプライヤーや完成車メーカーも巻き込んだ活動を展開したい。もう一つは、車両開発を経験した視点で、活動のアイデアを出していきたい」

 ―目指すところは。
 「宝の技術があっても生かし方が分からない企業もある。まずは各社の固有の技術を見つけ、今すべきことにフォーカスして準備することが大事。自社の技術を認識し、テーマを与えられれば他社とマッチングして部品開発し提案できるかもしれない」

 「提案力がつけば車がさらに進化しても次の提案ができ、海外や自動車以外にもビジネスチャンスは広がる。それが究極の支援だと考えている」
望月英二次世代自動車センター長
日刊工業新聞2018年4月13日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
ホンダの工場があり集積度が高い埼玉県やマツダ系が多い広島県のセンターなど、他地域との連携も深めていく方針だ。 (日刊工業新聞社浜松支局長・田中弥生)

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